第四話「モブキャラは調子に乗ったりはしない」


 二人の元に俺達は二ヤつきながら向かう


 「二人とも仲良くしてんね~!」


 と、俺は言って次に優斗が「桜井さんそのぬいぐるみ取ったの? 凄いな」と話しかける。

 桜井さんは顔を若干赤色に染めて答える。


 「これは私が取ったんじゃなくて…その、拓民くんが取ってくれたの!」


 恥ずかしくなったのか言葉の最後にビックリマークを付けたが、そういうところも『ヒロイン』らしくて可愛い。

 俺は『ヒロイン』の隣にいる『主人公』に話しかける。


 「この台で取ったの!? 凄いな拓民!」


 拓民も褒められるのに慣れていないのか、早口で答えだす。


 「あ、この台は確率機じゃなくて実力機だから、結構簡単に取れるんだよ。だからみんなでも練習すれば取れると思うよ」


 俺は『確率機』や『実力機』のことが良く分からないがあえて触れずに、ここは『適当に返事』を選ぶ。


 「まぁそれでも凄いよ拓民。流石『主人公』だな!」


 拓民は俺のテンションに追いついていないのかしどろもどろに反応をする。


 「あはは」


 おい主人公その笑い方はなんだ! と、ツッコミたいところだったがここは我慢する。

  しばらくしてから俺は次のイベントに行くためにみんなに言う。


 「とりあえず…次行くか!」


 桜井さんが頭の上に『?』を浮かべている。


 「次ってどこに行くの?」


 「それは俺も思った。英、どこに行くんだ?」


 「タピオカティー専門店行くのか?」


 三人が俺に質問を投げつける。


 「みんなには言ってなかったな。次はカラオケ店だぜ」


 「な、なるほど」


 「カラオケか」


 「おぉ」


 三人が次のイベント、『カラオケイベント』を理解した? ところで俺達はカラオケ店に向かうのであった。


 カラオケ店で予約していた部屋に入って、口を開いたのは優斗。


 「カラオケとか久しぶりだわ」


 それに続いて、桜井さん、拓民も言葉を出した。


 「私も去年友達と行ってから、来てないな~」


 「俺も小学六年生の時に親と一回来たきりだな」


 地味に拓民が悲しい事を言うが、俺達は色々と察せられるのでスルーする。


 「とりあえず歌うか」


 優斗がそう言って、俺は「順番決めようぜ」と提案する。


 「最初は誰行く?」


 拓民の声に反応はない。

 つまり最初に歌いたい奴はいないという訳だ。

 こうなれば『じゃんけん』をして決めるしかない。

 優斗がうっすらと笑いながら言う


 「じゃんけんするか」


 桜井さんは「だよね~」と言って、拓民は「マジか…」と言いたげな顔をする。


 (ふん、やっぱり俺の出番が来たな)


 この物語が始まってから、俺という『モブキャラ』は対した活躍はしていない。

 『カラオケイベント』を用意した理由はちゃんとあるのだ。単に俺がみんなと一緒にカラオケに行きたい。なんて理由で提案したことではない…絶対にない。

 すべては『モブキャラ』が必要なイベントを作るためだ。

 俺はどうぞどうぞしている三人の前に立って宣言する。


 「じゃんけんなど必要ない! 何故なら最初に歌うのは俺だからだ!」


 先までの空気がガラッと変わり、みんなの瞳が輝く。

 俺は歌う曲を予約して、マイクを手に取る。


 桜井さんが「英くん上手そう」とかなんとか言っていたが俺は歌う事に集中する。


 「遠い空に響く雨~流れ着いた先~」


 俺は歌いながらチラッとみんなの顔をうかがうと、桜井さんは呆然として、拓民は口から泡を出して、優斗は完全に耳を抑えている。

 きっと俺の歌声が良すぎるのだろう。

 こうして俺は綺麗な歌声で歌うのだった。




 「僕は闇に放り込まれた~♪ …ふぅ、楽しかった~」


 歌い終わった俺はみんなの方を向く。

 拓民は口を開けたまま天井を見て、優斗は俺の顔を困り顔で見てくる。

 桜井さんがふらつきながら俺の方に歩いて、


 「英くん、英くん」


 と、俺の名前を二階も呼ぶが、どこか様子がおかしい。


 「う、歌上手いね~」


 「マジか、そんなに俺上手かったのか~」


 桜井さんは褒められて調子に乗っている俺からマイクを受け取り、「次は私が歌うね」と言って、綺麗な歌声が俺達を包み込むのであった。

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