(3/3)
「あー……日本はいいなぁ……」
と、父は氷の入った麦茶
「今回はどれくらい日本にいるの?」
父より先に
「しばらくは日本にいるぞ。一週間ほど休んだら次は北海道だ。シマフクロウを
実に楽し気に語る父の話をふーんと聞き流し真希は麦茶をくぴりと
父に好きな仕事を続けてもらいたいのは真希も日葵も同じだが、日葵と違って真希は特別動物が好きなわけではない。
動物より日葵の方が可愛い。
「……真希には苦労をかけるな」
「やめてよ。その
何度も、何度も。耳にタコができるほど聞いた。自分の好きな仕事のために、家を
何も気にすることはないというのに。背中を押したのは真希と日葵だ。
「そうか……。それで、最近どうだ?少しは
「……………」
くぴり。
「ま、それなりに。
「そうか……」
しばし、遠くを走る車のタイヤが
「でも杏奈ちゃんとはうまくいってないようだな」
コトリと父は麦茶の入ったコップを
「まだ日本に帰ってきてから一度も杏奈に会ってないのになんでそう思うの?」
「せっかくお父さんが帰ってきたっていうのに、誰も杏奈を呼びに行かなかった。そういう雰囲気じゃなかったんだろ?」
その時はまだ寝るには早い時間だった。普通なら、
「――そういうのすぐ分かるの、ちょっと気持ち悪い」
「気持ち悪いとはあんまりだな……
ある意味
「何があったんだ?ほら、話してみろ」
おそらく話すまで父は真希を開放しないだろう。仕方なく真希は口を開いた。
「――普通の兄妹ってさ、なんだろうね」
それを聞いた父はフッと鼻で笑った。
「……部屋戻る」
「すまんすまん!まぁ
真希が上げかけた腰を再び降ろす。
「普通の兄妹かぁ。そんなもん誰にも分からんぞ。まぁお前とハルは仲が良すぎる気もするが」
「そんなこと分かってるよ」
そういうことではなく。
「なんというか……それでも適当な距離感ってあるじゃない?いくら仲が良くってもさ、例えば、この
「なるほど」
ふぅむと、父が
「そういう一般常識的な話なら、杏奈ちゃんが分からないわけないと思うけどなぁ」
「それは……私もそう思ってたけど……」
それが分からないからあんなことになってしまったわけで。
ふと、何かに気付いたように父が左手を顎から離した。
「ところで、さっきから
何を当たり前のことを、と真希は
「つまりお前は、杏奈ちゃんとハルの距離が近すぎるのを心配しているわけだ」
話しながら父が思考をまとめていく。
「お前はそれが恋愛的なものだと思うのか?」
父の問に真希はうぅーんと唸った。その心配をしていたのは確かだ。だが、そうなのかと言われると……。
「どうだろう……ちょっと、違うような気がする」
家族愛ではなく、異性に
「なら違うんだろう」
真希の迷いを父は一言で断じた。
「だったら――」
「あんまり飲み過ぎはよくないな。そろそろ寝るか」
不意に立ち上がった父に真希は
「なぁ真希。
律子。それは、今の母親の名前だ。
少しでも距離を
突然話題が母のことになったの
「どうって……頑張ってくれてると思うよ。
そうかそうか、と父は目を細めて頷いた。
「律子さんと杏奈ちゃんは、とてもよく似てるよ」
「そりゃそうでしょ。血が
「そうだな。外見も、そして性格もそっくりだ。何事にも一生懸命で、少し思い
父が杏奈と過ごした時間はまだそう多くはないはずだ。
だが、少なくとも父の目には真希よりも杏奈についての多くのことが見えているようだった。
「ともかく、だ」
父が真希の頭に手を置いて
普通に
「杏奈ちゃんのことはどうやらお姉ちゃんに
「話してみろって言ったのに……」
「解決するとは言ってないだろう?」
真希がぐちゃぐちゃにされた髪を
「真希。お前は、ハルと杏奈ちゃんの問題だと思っているようだがな。それは間違いだぞ。よぉく考えてみるんだ」
どういう意味、と真希が問いかけるよりも早く、父はその場を後にした。
(言いたいことだけ勝手に言うんだから……もう……)
日葵と杏奈の問題ではない。それはいったいどういう意味だろう?
しばらく考えたが分からず、床の上で寝てしまう前に真希は思考を中断して
麦茶の残りを一気に
(……ちゃんと片づけてよね)
父の
寝る前にもう一度考えよう。そう思った真希だったが、ベッドに横になり意識が眠りという
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