ブラコンお姉ちゃんは弟の誕生日を祝いたい。
(1/3)
「……いや、
いつものように、授業前の
あれからどうなったのかと
「好きな男の子の家に
というか、と千佳子は続ける。
「むしろ弟君のほうがアンタのこと
それに対して真希はふーやれやれと
「ハルをそんじょそこらの中学生男子と一緒にしないでもらいたい。
「だからその
千佳子をふと思い出したように
「聞いてる感じその女の子良い子っぽいし、
満足がいったのか鏡に
「ずっと弟君の恋愛に口出すわけにはいかないんだしさ。何事も経験が大事。それに、誰かと付き合うことで弟君ももっと
「おうてめぇ朝っぱらから下ネタか?ビッチめ」
「おっと、
朝っぱらの講義室でビッチだの処女だの
これでは男が寄りつくはずもない。
「ってかさぁ」
「アンタだけならともかく、妹ちゃんも全面的に協力してるってのがちょっと気になるよねー」
「気になる?」
はてと真希が首を
「妹ちゃん、どう思ってるのかなって」
いまいち千佳子の言葉がピンとこないので、ますます真希は首を傾けた。
「妹ちゃんは弟君が好き。最初、それが恋愛的なものならあんまりよくないよねって話だったけど、今となってはそういう好きというよりかは……」
千佳子が真希の鼻先に
「なんか妹ちゃんがアンタみたいになってきた気がする」
その言葉を受け、しばし考えた真希は、
「……じゃあ何も問題ないんじゃない?」
「まぁ、確かにね。
今日の雑談はこれで終わり。
「――でもなーんか、気になるんだよねぇ……」
授業が始まったので千佳子の最後の
「うーん……うーん……」
昼過ぎのリビングにて、ソファにだらしなく寝そべりながら真希はスマホをぽちぽちと
大学の授業は午前中で終わり。学食で千佳子とお弁当を食べた後、何も予定がなかったのでそのまま家に帰ってきたのだ。
ちらりと視線を開け放たれた窓へと向けると、外では母が
家が静かだからリビングでくつろいでいる、というわけではない。基本的に真希は自室を勉強と寝る時以外には使用しないのだ。もともとこの広い家に真希と日葵だけという時間が多かったため、一人の時間が欲しいと思うことがほとんどなかった。
だから家にいる時間の大半を真希はリビングのソファで過ごしている。
「うーん……」
「……………」
しばらくそうしていたが、息苦しくなって顔を上げる。不意に吹いた風が、開け放たれた
「よいしょっと」
母がシャツの
(……けっこう
水を吸った
なんとなく、悪い事をしているような気分になる。
(無理とかしてないといいけど)
主婦ならば、誰もがしていることだろう。だが母の場合、それまでと今では家事の量が違う。洗濯物にしても、自分と
「……お母さーん」
思い立って真希は声をかけた。呼びかけに気付いて布地の
「なぁに?」
もう四十は
「手伝うよー」
真希がそう
「大丈夫よー気持ちだけもらっておくー」
やんわりと
「でも大変でしょ?」
「全然平気よ。あんまり年寄り
「……なら、いいけど」
ストン、と真希は腰をソファに戻す。そう言われれば無理に手伝うこともできない。
分かってはいたが、やはり母は真希が家事をすることをあまり
それが母親として当然のことなのだと。
(――そんなに頑張らなくても、私とハルは……)
父が新たなパートナーに選んだ今の母と、その娘の杏奈を家族だと思っている。
「ま、そのうちいい感じになるか」
小さく声に出すことで気分を切り替えて再び真希はスマホを手に取り、ソファに身体を横たえた。
どれだけ考えようとも、今この新しい家族に必要なのは時間を置いて他にあるまい。
今真希が考えるべきことは別にある。
(千佳子に聞いてみるか……)
連絡用アプリに文字を打ち込んで送信する。
向こうも
『一人っ子で男子中学生でもない私が分かるわけないだろ』
(ですよねー)
まぁ真希としてもまともな答えが返ってくると思っていたわけではなかった。だったらなぜ千佳子に聞いたのかといえば、千佳子以外にこうやって気楽に相談できる相手がいなかったからである。
(いっそ本人に……でもそれはサプライズ感が……)
そしてまた真希はうーんうーんと
毎年この時期になるといつも真希は頭を
「ただいまー」
と、
「お邪魔しまーす」
と、日葵の声に続いて別の少年の声が響く。真希が
「おかえりー」
真希が声をかけると気付いた日葵が、
「ただいま!ちょっと友達と部屋で遊んでるね」
「お邪魔しますッ!」
やたら元気な
初めてみる顔ではない。日葵とよく遊んでくれている子だ。大人しめな日葵とは
やんちゃそうな印象を受ける外見だが、日葵とは小学生からの付き合いだし挨拶もしっかりする。何よりこれだけ日葵と仲がいいのだからいい子なのだろう、というのが姉である真希の
さすがの真希も友達がいる前でハグは
真希を
「――いいなぁ、俺もあんな美人な姉ちゃんがほしいなぁ」
「それ家に来るたびに言ってない?」
真希は今、Tシャツに短パンという非常にラフな
階段を上がっていった二人を見送った後、ふと真希はさきほどの千佳子の返信を思い出した。
(……男子中学生のことは男子中学生に聞けばよいのではないだろうか)
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