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「お待たせー」
食欲をそそる
その日替わり定食の乗ったトレイを持った
学食はお腹を空かせた学生達で
「なにそれ?」
「ゆーりんちー。油が
「油に
「お前よりはデブじゃないよ」
「胸が重いからね」
「こいつ……!」
心底くだらない
手を合わせていただきますと
「揚げた鶏に香味ソースがかかってるのか。手軽そうだし美味しそうだね」
「そちらも何か差し出すのならば一切れ分けてしんぜよう」
カバンから弁当箱を取り出した真希。
「今日のお弁当は私作でも母作でもない。私の妹作だ」
「ほう。妹ちゃん。それは興味深い」
千佳子も注目する中、弁当の包みを
「中学二年生だっけ?
千佳子の言う通り、そこにはちゃんとしたお弁当があった。
メインは
「いただきます」
とりあえずメインである生姜焼きを一口。
「……うん、美味しい」
「どれどれ」
向かいからつと
「……ふむ。これ作った妹ちゃん欲しい。ちょうだい」
「じゃあ千佳子と私が結婚するしかないな……」
「なんでお前なんだよ……せめて弟君だろ……いやお前がそれを認めるとは
ともかく、味付けは
(これはもう、お弁当勝負は
ここまで妹が
(あれ……これお弁当に限らず、どんな勝負でも勝負する前に勝敗が決まっているのでは……)
今になって、姉が妹に張り合うということのかっこ悪さにようやく気が付いた姉であった。
当然この杏奈の作ったお弁当は日葵にも好評であることだろう。どちらが上かなどと日葵が
「ん?」
おかずの入ってる段ではなく、ご飯の方に目が行く。
「あら可愛い。犬かな?」
千佳子の言葉に真希は首を横に振る。
「猫だよ」
おにぎりの一つに、小さく切った海苔で何かの顔を表現したものが一つ混ざっていた。持ち運んでいる時に少し崩れたのか、それとも最初からこうだったのかは分からないが、少しばかり
その
「――こんなお弁当を作る妹を千佳子にはあげられないなぁ」
「くー、一人っ子は
本当に
勝ち負け
弟がいるだけではこの感覚は分からなかったろう。
(今度一緒に料理でもしてみようなかな)
二人並んでキッチンに立つ真希と杏奈。そして二人が作った料理を食べて笑ってくれる
うん、悪くない。
「あ、そうそう」
妹
「さっき生姜焼き一枚持ってったでしょ。ゆーりんちー一切れよこせ」
「もう全部食べちゃった」
「こいつ……!」
しっかり最初の軽口の仕返しをくらった真希だった。
少し日が
「ただいまー」
日葵が学校から帰宅するとすでに姉と妹の
「「おかえりぃー」」
その後にそれぞれハル、お兄ちゃんと続く。
二人はダイニングテーブルを
「何してるの?」
あまり
その大きな理由としては両者ともが日葵を見ると
日葵がメモを
「明日ね、お弁当お姉ちゃんと二人で作ろうと思って」
意外な答えにほえぇと日葵の口から間の抜けた声が
意外、そう意外だ。この二人は仲が良いというイメージが日葵の中にはなかった。仲が悪いということは断じてないが、日常会話以上の会話はしない。二人が仲良く肩を並べて料理するということがパッと頭に浮かばなかったのだ。
「この
敵わないとは言いつつも杏奈がしょげている様子はない。
「そしたら、お姉ちゃんがお料理教えてくれるって!」
姉はたははと笑う。
「
そう言って苦笑する姉だが、弟には分かる。
嬉しそうだ。
「買い物、今から行くの?」
「あー、うん、そうしようかな」
「じゃあ僕が荷物持ちに付いていくよ。あ、でもそんなに買わないだろうし必要ないかな?」
日葵の申し出に、真希と杏奈は顔を見合わせた後、声を
「「そんなことないよぉう!!」」
その後のスーパーまでの道のり、両側から腕を組まれた日葵はとても恥ずかしく自分の言葉をちょっぴり
だが、スーパーに入ってカートを押している間、前を歩く姉妹が肩を並べて歩いているのを
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