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「本当に仲がいいわねぇ」
そう声をかけつつ、コトリと目の前に
チンッという
どれもそれほど手間のかかる料理ではない。だが、ご飯よりもパン派の真希達に合わせた
「ありがと、お母さん」
朝食の用意をしてくれた女性に、日葵は花が咲いたような笑顔を向けた。
その笑顔に
「お弁当の用意が残ってるから先に食べちゃってね」
そしてパタパタとキッチンに
それは少し前までその役目を
その人はキッチンでせっせと三人分のお弁当を用意してくれている。父より三歳若い四十一歳。あまり大声を出すところが想像できない、落ち着いた雰囲気の
父が新たなパートナーに選んだ人。真希と日葵の新しい母親。
父から再婚を考えていると聞かされた時、真希も日葵も素直に父の決断を受け入れた。
何度か家族全員で顔合わせの会食を
なぜなら、まだ全員
ほどなくドアが開き、今、この家にいる最後の一人が姿を現した。
「おはよっ!」
元気いっぱいの
真希と日葵が挨拶を返す中、とてとてと彼女は
「ごめんね。いつも待たせちゃって……」
そう
「
こちらに視線が向いたので真希は、
「いいじゃない。三つ編み。似合ってるし可愛いと思うよ」
「そう?お姉ちゃんがそう言ってくれるなら……」
彼女はくりくりと自身のお
(可愛い)
素直な感想を真希は胸に抱いた。
彼女こそが真希と日葵の父……なんてことは当然なく。
彼女の名前は
父の再婚相手に連れ子がいることを知った時は、再婚を告げられた時に以上に驚いたのを真希は覚えている。父が再婚を決めただけでも驚きであるのに、それに加えて再婚相手も一度パートナーと
ただ母親の方はパートナーと死別したわけではなく離婚らしい。詳しい原因は真希も知らない。知る必要もないだろう。
「「「いただきます」」」
三人
動物カメラマンである父は家にいるよりも世界各地を飛び回り動物と向き合っている時間のほうが長いのだ。今頃はライオンの寝顔でも
母の死に
新しい母も父のその仕事には理解を示している。生き物の見せる様々な表情について語る父が好きなのだとも。そうでなければ再婚など考えまい。
真希はまだ温かいトーストにバターを
「!!」
ふと真希が何かに気付く。その突然舞い降りたチャンスにテーブルの上を見回すが……、
「あ、お兄ちゃん、ちょっとこっち向いて!」
真希よりも早く、真希が探していたもの……ティッシュを一枚手に取った杏奈は日葵をこちらに向かせた。
「んぅ?」
キョトンとした日葵の
バターではなく苺ジャムを選択するそのチョイスが可愛いと思うし、なんでほっぺにジャムが付いたこと気付かないんだってゆうかそのジャム付いた顔できょとんってするの
「ジャム付いてたよ!そのまま学校に行ったら
「あはは……ありがと」
ジャムを拭きとったティッシュを片手に仕方ないなぁと言わんばかりの苦笑。拭き取ってもらった日葵も恥ずかしそうに笑う。
苦笑、という体をとってはいるが第三者から見ればありありと分かる。そんな少し抜けた兄の面倒を見るのが楽しくて仕方ないといった顔だ。
その妹がチラリと姉に視線を送る。
「……ふふ」
「くッ……!」
兄に気付かれないように口角を上げた妹と、その様子に
(あらかじめ
姉妹の間で
姉と妹が自身を取り合って日々
(そもそもこの正面の席は
今後のことも考えてポジショニングについて真希が
「お兄ちゃんパン一枚でいいの?もっと食べないと大きくなれないよ!」
そう言って杏奈がごく自然に隣の来春の腕に触れる。
「腕周りもこんなに細いし……女の子みたい」
「うーん……朝からそんなに食べられないよぉ」
多少は気にしているのか、自身の腕をさする日葵。元々の体格が小柄だというのもあるし、特にスポーツ等をしているわけでもないので筋肉質でもない。そのうえ、病的とまではいかないまでも白く
むにむにと来春の二の腕あたりを
「……ふふ」
「うぬぅ……!」
「お姉ちゃん?」
「ふぇ!?え、あ、いや、ちょっとトマトの
ごまかすために
が、問題はそんなことではない。
(地の利をとられている……!!)
そう、勝負が始まる前から真希は不利な状況に立たされていたのだ――!
(完敗だ……)
朝の時間は短い。あまりのんびりしていては真希は大学、日葵と杏奈は中学に遅れてしまう。なのでこれ以上の勝負は
もっとも、細かな
それが真希と杏奈の、日葵争奪戦。
事の
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