天岩戸3

「つまりどういうことだ!?」

「つまり岩戸の中に精神がさまよっているってことだ」

わからねぇよ!


「精神は目には見えないからわからないのも当たり前ね」

「うん」

「で、それはちょっとまずい状態なのよね……」

「え?」

「精神は魂を覆ってて、魂の崩壊を防いでいるのよ。肉体が精神を飛び出るのを抑えて、精神が魂の崩壊を防ぎ、魂がすべてを動かす超重要な部分」

「なるほどな。つまり天照アマテラスが危ないわけか。ったく、迷惑かけやがって」

「随分冷静じゃない?」

「スキルのおかげでな」

「便利なスキルだネ」

「だろ?最初は微妙だと思ったんだが、小さい戦いでは重宝してるよ」

「じゃあ天照アマテラスを助けるよ」

「ん?ああ。お前ならできそうだな」

「そうだよ。やってみる」


そう言いながらネツは目を閉じた


「見つけた――」


そして、ネツは倒れこんだ。





(さーて、どうしたものか)

ネツは、ネアがやったように精神世界をさまよっていた。


見つけたのはいいものの、どこに精神の核があるのかがわからない。

精神は一種の世界で、自分の領域

精神世界のどこかに『精神の核』というものがあるのだ。

精神の核は、肉体と同じ形をしている。

目立つはずだが……


「こんなに真っ暗だったら全然見えないね。精神世界で魔法を使うと下手したら精神壊れるもんな……」


よって、ネツは真っ暗闇を自身の視覚と聴覚だけで探していた。

もちろんトヴァがマッピングしているので迷うことはないが。

(まあ、気長に探せばいいっしょ)


魂の崩壊は、始まっても最速で1日、最も遅くて3日で完全な崩壊に至る。

精神が肉体から離れて魂の崩壊が始まるまでは5日間の猶予がある。

例外はない。

少しぐらい急がなくてもいいだろう。

幸い精神世界での1日は現実世界の5分にしかならない。


(とか思った瞬間だよ)

これをフラグというのだろう。

「うっ、ううっ」


泣いてる天照アマテラスを見つけた。


「ど、どうしたの?話してみて」

「それが……」


そう言って、天照アマテラスは話し出す。


なんと、マークの言う通り。

スサノオが天照アマテラスに無礼を働き、耐えかねた天照アマテラスが岩戸に引きこもったのだという。

違うのは。


「私の晴れ舞台だって言うのに、どうしてっ……」


晴れ舞台?

「それ、どういうこと?」

「え?ルーフィから聞いてないですか?私……」


聞いてない。

全く聞いてない。


「一切聞いてないよぉぉぉぉ!」

「えええええっ!」





「ったく、ルーフィめ。報連相ホウレンソウ徹底させとくべきだったね……」

「うちの子がすみません……」

「あんたの子じゃないでしょ!」

「そうでした!」


どれだけ天然なのこの子は。

長年生きてる私でもこんなに天然な子……


見たことは、ある。

ルーラ。

私の脳裏にルーラの無邪気な笑顔が現れる。

『テヘッ』なんていう幻聴まで聞こえてきた。

うん。

今度天然とでうちの超高い絵画とか壊した時には言い訳の暇なく折檻してやろう。


それはさておき。

「さ、出よう。ここにいてもつまらないでしょ」

「はい!もう何でここにいたのかわからなくなりました!」

素直な子!


「ここでたらルーフィに説教ね」

「私はまず報告から行こうかなと」

「その節はびっくりしたよ」

「ルーフィのせいですみません」

「いや、しかたないんだけどさ」

「ふふふっ」

「ふふふふふっ」



似た者同士の現世に戻る行進は今始まった。

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