敵討ち 終盤

「そ、それはごめーーん!でも、朗報だよーー!『決定打』さんが息し始めたよ!」






もっと空気を読んでほしい発言だった。


「「「はっ!?」」」

「ユアは腹を貫かれていたはずだろ!けがはどうなってるんだよ!」

「えっ!マーク、何言ってんの。そんなのあったっけ?」

「ルキア、そういうのはいらん、どういうことだ!」

「ひっ!リギドにそんな怒られるとは思わなかった!冗談言ったのがわからないの?」

「「今冗談を言うところじゃないだろ!」」

「ひぃっ!」


俺とリギドの二人に押し殺されて悲鳴を上げるルキア。

いま冗談を言うところではない。

それどころか、『決定打』の復活なんていう最重要報告事項の報告で冗談を言うとかどういうやつだよ。


「えっとね!見るも無残だった傷がどんどん修復されて行ってる!」

「いや、どうなってんの!」

「そんなことボクに聞かれたってわからないよ!でもあと数分すれば前線復帰できるよ!」


問題発言ぶっ放し。

さすがのシュウも青ざめてる。



「だとよ、お前ちょっとやばいんじゃないか?

「たわけ。ちょっと厳しいが我にできぬことはないわ!」


それ、フラグです。


「今すぐかたずけて見せよう!俺はこの場所で死ぬ男ではないのだよ!」


遂に素に戻って凶暴に……まて、いま……


死亡フラグですよ。





「またせたな、俺復帰だ。」


そう言い放ったユアは、黒く変色した剣を構えた。

何あれかっこいい!


「ずいぶん遅かったな。待ちくたびれたぞ。」

「すまなかったな。あれは俺の敵でもあるようだ。」

「そうか。敵討ちに他人が乱入するのは邪法だ。マーク、ルーフィ、ユア、お前らに託した。ルキア、俺の治療を頼んだ。」

「まかせろ」

「お、おう!」

「俺はあまり敵に興味はないんだがな。」

「ホーいよ!」


名前を呼ばれユア、俺、ルーフィの順で返事をした。ら、リギドは満足そうにルキアの方に向かっていった。


随分頑張らせてしまったものだ。


そう思ってる間にユアとシュウの戦いは始まっていた。

何この戦いかっこいい!


でも、ユアのスキルじゃ『悪魔王ソロモン』に対抗できないことを思い出した――


――けど俺はユアが一つスキルを獲得してることに気づいた。

新しいユアのスキルは『崩壊者アバドン』という。

そしてアバドンといえば破壊や滅ぼすことを司る悪魔で奈落の王。

崩壊と聞いて、なるほどって思った。

そして、いまユアの剣が黒いのは『崩壊コラプスエネルギー』という崩壊を引き起こすものをまとっているからだそうなのだ。

もちろん上位に入るスキルであり、強化された『悪魔王ソロモン』でもやすやすと対抗できたようだ。


「ッチ!なんで新しくスキルを獲得してるんだよ!」

「昔の師匠からもらったんだよ。」

「なんて厄介な!」


これは勝てる!死亡フラグが功をなしたな!



「お前のやった悪行、後悔しながら逝くがいい、『崩壊剣戟ディスライフセイバー――――!!』」


途中ユアの剣の黒が深まったかと思ったら、その瞬間にユアはシュウを切り倒した!

敵討ち、成功か?


「や、やった。やったよ、サクラ、ウィラ。」

俺は二人の名前を呼び、祈る。

すると


(あほ、こんなこと望んでなかったわよ)

(ったく。こんな子に育てた覚えはなかったんだがな。)


そんな声が聞こえた気がした。





「さて、じゃあ帰るか……」

そう言いかけた時だった。


「「パパ?」」



重なる声。

バッと振り向くとそこには。


蒼い髪にはヘッドフォンが装着されている。

寝巻のような服。

お互いの手は握られており、反対にはぬいぐるみを抱えていた。

双子

そう言った方がいいのだろうか。

とにかくそこにいたのはまだ幼い女の子二人だった。


俺にはそれ・・が何か分かった。

わかってしまった。


「子供……?」


気づいた時には遅かった。


「「パパ―――――ッ!!」」


双子は走り出した。

親――シュウは生きていた。



「カハッ!」

「「パパ!パパ!」」


こいつは、俺らが龍魔帝国ドラゴワールドにいた時から、子供を持っていたのだ。

まずい、ここは許せなと思うべきなのだろうが、良心がそれを許さない。

この双子はシュウがいなくなってしまったらどうなってしまうのか。

多分だが、ネツが拾ってくれるだろう。

俺らを拾ってくれたように。

だが、拾ってくれなかったら?

母が駆けだしてこないことから母は病気かもう死んでいると予想がつく。

親無しでこの場所にいて、夜凶暴な魔物に襲われるか餓死するだろう。


「よく……聞け……アルカ、イルカ。俺はもう……だめだ。若い者の……ッパワーはものすごかった。」

「「そんな、やだよパパ。」」


そんなやり取りをした後、シュウはこちらを向いて、何か言った。



〈マーク、といったか。図々しい願いであることは承知の上で、頼みがある。どうか、俺の子供たち……アルカとイルカという。この子たちを救ってやってはもらえないだろうか。  といっているぞ。〉



ユグが翻訳してくれた。

なるほど。図々しいな。


だが、俺は恨みの相手は本人だけでいいと思っている。

子供まで責任を負うことはいけないと思うのだ。


「その願い、聞き届けた。お前の願いはかなうだろう。」



〈ありがとうな。これで心残りなく逝ける。  といっている。〉



「にしても、この別れは悲しすぎる。もう俺は恨んでないし、救えるなら救いたいものだが。」

「ああ、そういうと思った。大丈夫、この人助かるよ」


またもや爆弾発言をした。


「マジかルキア!」

「うん、ユアが『崩壊コラプスエネルギー』を解除してボクが治療すれば後遺症が残るだろうけど命は助かるようにできるよ」

「ユア、お前に対しても敵なんだろ?お願いだ、許してやれないか?」

「何を言っている」


ユアが厳しい声で返してきた。だが、そのあとの発言は本当に予想外だった。


「俺は一回お前に負けたのだ。お前の頼みなのだから聞くしかあるまい。」


そう言ってくれた。



「それは困るな」


謎の声がした。


それは戦場で聞く声にしてはあまりに穏やかで……


「「「!?」」」


その瞬間、シュウがいきなり命を落としたのだ。


「何があったんだルキア!報告しろ!」

「今回はマジで、わからない!何があったのか、さっぱりだよ!」

「「パパーーー!」」


戦場大混乱。

そんな中、さっきの謎の声が聞こえる。


「おやおや、何をやっているのやら。私が殺しましたけれども」

「ッ!お、お前は誰だ!」

「私はレイ。以後、お見知りおきを。」


短いやり取りの後レイは消えた。


魔法の一種だろうか。



「「パパーーーーーーーーーーッ!」」


その場には、アルカとイルカの絶叫が鳴り響いていた。

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