剣士の過去

「あっ」




青年――ユアは、漏れ出るように言葉をこぼした。




「……」




そこに映る記憶の中には、昔の師匠である女子3人が笑顔で立っていた。





ユアの師匠は異界にいた女子3人である。

ユアのいた世界では性別など関係ない世界であり、女子の方が強いというところが当たり前のようにあった。

その中でもユアの師匠の女子は世界で5人の中に入るほどの実力者だった。


オレンジ色の髪が特徴的なツインテールの一番強い女子。

水色のショートカットで姉妹の中でも一番のかわいさを持つ女子。

奇麗な白髪を持つ姉妹の中で一番の美しさを持つ女子。


オレンジの髪の女子が一番強く魔法、技術、すべての面においてユアを上回っている。

教えてもらったのは剣技で、ユアの身体能力を大幅に上昇させた。


水色の髪の女子がユアに教えたのは魔法で、4代元素を操る元素魔法から精霊の力を使い発動させる精霊魔法、物理法則にしたがう物理魔法、高火力で扱いが難しい核魔法まで。

ユアの知識を大幅に上昇させた。


そして白髪の女子はスキルの使い方について教えてくれた。

スキルによる惑わし、ユアの持つスキルの正しい使い方などである。


おかげでユアは神系スキルである『技魔能王アテネ』というスキルを獲得した。

それにより因縁である敵を倒しえたのだが……


その後、ボルケーノがネツと一緒に迎えに来てネアの死を知り3人の元を離れそれからあっていないというのが今の状態である。



(まさかこんなことで会えるとはな。)


というのがユアの本当の気持ちである。


(だが、因縁の敵はもう倒した。出てきたのは……走馬灯か。)




『そんなわけがないでしょう』



後ろから聞こえた声にユアは驚きつつ振り返った。


(ああ、なんだお前か。)


そこにいたのはオレンジ色の髪をした少女……の白い靄だ。

判断材料の髪色がないのでだいぶあやふやであるのだが、きっとそうだろう。

その証拠に。


『お前って何よ。『お』の前?『え』なの?『え』って誰よ。名前短すぎるでしょ。』


と冷静に文句を言われた。


(これはこいつだわ)


『今度はこいつ?私には名前があるんだから名前で呼んでほしいわね』


(そんなことはどうでもいいんだよ。なんでお前は出てきたんだよ)

『あなたがちょっと間違ってるからたださせて上げに来たのよ』

(なにがだ?)

『あなたは因縁の相手を打ててないわ。』

(は?)

『やっぱり記憶操作ね。言っとくけどあなたが主と仰ぐ人があなたの因縁の人なのよ。』

(なんだと?)

『そのまんまの意味だよ。記憶操作されてるのよあなたは。』

(証拠は……)

『トヴァ』

(……)

『を持ってる私にごまかしやら幻覚やら効くと思ってるの?』

(じゃあそうなのか)

『そういうことよ』


ユアはうろたえた後、すべてを理解したように口をつぐんだ。


ユアの母親を殺し、ユアの姉をボロボロにし、ユア自身と師たちで倒していたと思っていた悪魔の様な者がいきていたといわれれば、当たり前ともいえる。


『幸いにもあの子たちがいるんだから手伝って敵討ちを成功させなさいな』


そう言ってその者は手の上に球を出したかと思うと、その球にマークを映し出して見せた。

その魔法は、ネツの使う『魔王の瞳デモン・レイズ』に似ている。


実際その魔法は『魔王の瞳デモン・レイズ』の原理を使用した魔法で、そう呼んでもいい代物となっている。


(確かにそうだな。利害が一致している。まずは仲直りから始めてみよう。)

『ぷぷっ!そのピュアなところ、やっぱりあなたね!』

(なんじゃそりゃ!)

『で、ここからは本格的なお話。お姉ちゃんがね、ユアに会いたいって言ってるのよ。お願いだから生きて帰ってきて、お姉ちゃんに顔見せてよね。』

(何そのシスコン。めちゃくちゃ姉思いじゃん)

『い、いいのよ私は!お姉ちゃん大好きだもん。』

(ふ、久しぶりに元気が出たよ。ありがとな。検討してみるよ。)


『ただその前に!一回だけ私の名前を呼びなさいな。』

(なに怒ってるんだよ)

『ほら早く。』

(わかったよ。ミ……)


少女の名前を言ってユアは肉体に意識を向ける。

別れはあっさりだった。



ユアがいなくなった世界で、少女はつぶやいた。


『お願いだから早くね。もはや私だけじゃ精神の安定にならないようだからさ。』



その言葉を最後に、白靄に包まれた世界は静かに終わりを告げる……

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