伝説覚醒

「よけたか。なかなかの腕前のようだ。」




そこに立っていたのは一人の侍。


俺は強さというものを、再認識することとなる……




本当に、見えなかった。

リギドの言葉に、本能が反応してくれて本当に良かった。

リギドの言葉がなかったらあるいは……


脳裏に、血を出しながら倒れる俺の姿が浮かぶ。

頭を振りながらその可能性を否定する。


こいつは、ダメだ。

伝説能力レジェンドスキルを持ってない俺は当たり前で、ルーフィも1分、もしかしたら30秒持たないかも……

ルキアでさえアシストしか成り立たない、というか、アシストで成り立つルキアが以上だ。


リギドと互角、もしくは若干上回っているであろう戦闘能力。

もしかしたらもっとあるかもしれない。

俺のスキルの解析鑑定をごまかした、アルファ、あいつと同じようなことができて、隠してる状態でこれほどだとしたら……

俺らに勝機はない。

魔王レベルより上の者が魔王についてるとかふざけんじゃねえよと思ってしまうぐらいに相手が強い状態にある。

これはいよいよ覚悟しなくてはいけない次元だ。

伝説能力レジェンドスキル、獲得と行くか。


「来るがいい。何人同時でも相手してやる。」

「随分と強気なことだな。」

「当たり前だ。」

「油断禁物っていうじゃねえか、油断は死を産むぜ。特に、戦場ではな。」

「油断禁物だと?なぜおまえがその言葉を知っている。」

「こっちの世界には四字熟語なんてなかったか?いやあるか。ちょっと違うだけだな」

「こっちだと?どういう意味だ?」

「そのまんまの意味だよ。こっち側からはリギドが主力だ。ルキアとルーフィがアシスト。」

「お前は?」

「俺はちょっと切り札の獲得に専念するんだよ。」

「ったく仕方ないな。マーク!ぜったい切り札を獲得するんだぞ!」

「任せとけ!」


言葉巧みで時間を稼いで、少しでも戦闘の疲労を消す作戦・S作戦だ。


「源鬼神の子供にて、現存のなかで1、2位を争う剣士といわれている。ユア・ウィエアルだ。」

「魔王ネツの配下で、軍事部門を担当しているリギド・フラムナイトだ」

「魔王ネツの配下で、お友達。ルキア・ミーアネントで~す」

龍魔帝国ドラゴワールドの居候。お前の主人が起こした戦争に巻き込まれ命を落としたサクラとウィラの子供。ルーフィだ。家名はない。」

龍魔帝国ドラゴワールドの居候……ってどうなの!?って感じるルーフィの弟のマークだ。」


名前を名乗りあった。

もう心残りはないだろう。


「敵討ちの……犠牲になってもらう。どうか来世が輝かしいことを。」

「我が主様に、手出しはさせない。」




激戦が、始まった。




俺らの役割は言ったとおりだ。

リギドが主力、ルキアとルーフィがアシスト。俺は切り札、つまり伝説能力レジェンドスキルの獲得だ。

普通のものではかなわない。

もっと特別な、もっと特殊な。

そう、大英知王ナタトゥヴァのような、自我の持つスキルを。

天才カシコサを、世界賢者ユグドラシル

つまりユグに進化させる。

これは普通の胆力ではできない。

賢神者ヴィクターをゲットして、進化させる。


これでもいいさ。

魔王になったっていい。



やれるよな、天才カシコサ



〈お、お任せください!〉



やっと反応した。

そして、返事には納得した。




戦いは本当に激しい物だった。


リギドがそこら辺の低級魔物なら一瞬で滅びるであろう銃弾を、まさかの連続発射。

ユアはそのすべての弾を、剣で落とし、涼しげな顔をしている。

超人同士の戦いと呼ぶのにふさわしい、奇麗で憧れる戦いだ。


アシスト側の実力も、二人には劣るが強力だ

ルーフィが放つ小さい竜巻にルキアのコブラに変化した牙が毒を放ちリギドの弾に上乗せたり

ルーフィの剣が相手側の剣を切り刻もうとしたり


だが、実力の差は勝負に確実に移り始める。


神速のの銃弾が。

俊足の剣技が。

快速の竜巻が。

飛び交う獣の咆哮が。


戦場を包み込んでより激しさを増していく。

だが。

もともと人間であるリギドには体力の限界があるのだ。

流石のリギドでもこの激しい戦いをずっと続けることなど不可能である。

そのことは、マークはもちろん、当事者であるリギドが一番わかっているはずだ。

もしくは、ネツにリギドの力の秘密を教えてもらったルキアこそが一番わかっていたかもしれない。


じょじょに疲れてきたリギドと、それを心配しているルキア。

上位者が危ない状況になってきた状態で、ルーフィもだんだんと焦りを感じてくる。

俺は、精神を安定させるのが精いっぱいで周りの状況も見えていない状態。

そんな中、後悔した。


リギドがついに膝をつき、状況が最悪になる。


「リギド!」


ルキアが叫ぶ。

ルーフィが止める。

俺も少しだけ焦る。


これはだめかもしれない。


「かくなる上は……」


俺が無理やりに魂を削って戦う、プランTだ。

俺が決断するまさに瞬間。



*ったく。ロリショタだったりこの件だったり本当にしょうがない奴なのです。仕方ないので手伝ってやるのですよ。*



そんな声が聞こえた気がした。

そして、天才カシコサに意識を集中させると違和感があることに気づく。

無理やり何かを出されたり、何かをくっつけられたり、そんな感じなことを感じたとたん。


俺の世界に一つの音が鳴り響いた。



――スキル:大英知王ナタトゥヴァの協力により、ユニークスキル:天才カシコサが進化します。賢神者ヴィクターを獲得、成功しました――



放たれるのはどこか神聖な空気を感じるまばゆい光。

それは世界の高みに至った者への祝福。

それは強者の仲間入りの歓迎。

伝説能力レジェンドスキルを獲得した証。



マークは望んだ能力を望んだとおりに獲得したのだった。






俺のスキルが溶ける。

そんな感じがした。

実際は違う。

出されたスキル、つまりいらないスキルが純粋なエネルギーに還元されていく証で、俺の中の魔力量がどんどん増えている。

どんどん増えていく。

破裂しそうなぐらいに増えていく。

やばいと思うのだ。

ちょっと、ちょっと。

やばいやばい。

まずいってば、おいどうにかおさめろ。


そう思った瞬間制御された。

え?そんな都合よく?

何か違うな。

しかも、この力は天才カシコサだけでは抑えられないほどに強大だ。

進化でもしない限り……って進化?


もしかして進化したとか?

たしかになんか賢神者ヴィクターだとか鳴り響いてたような……



――もしかして!?

天才カシコサじゃなくて、賢神者ヴィクター



〈はい、ヴィクターと申します〉



やっぱり。

まさかだな。

う、む。

進化したかー

そっかそっかー



はぁ!?


まさかそんな簡単に!?

俺の決意が。


まあいいか。

結果オーライで。



意識を戦場にめぐらすと随分面白い映像が見れた。

やったか、というような顔でこちらを見守るリギド。

しまった!という顔をしたユア。

ええ!?という顔できょろきょろしているルキア。

こいつは俺が育てた適菜顔をしているルーフィ。


そしてもう一つ意思が。



*これからどうするかはあなた次第なのですよ。名前を付けたり、放置したり、自由です。*



成功するのが当たり前といわんばかりの協力者トヴァ

俺は心の中で協力ありがとうと言っておく。

おかげで敵に勝てそうだ。



*当たり前なのです。お前はともかくリギドやルキアに死なれるとネツが死ぬほど悲しむですからね。*



聞けば聞くほど魔王らしくねえ。



*頑張って生還するのですよ*



ああ。任しとけ。


そんなやり取りを交わした後、声はいなくなっていく。

俺のやるべきことをやらなくてはか。


「ユア。なぜおまえは、俺らの敵討ちの邪魔をする?」


すごんでみた。


予想以上に効果的だったのか、ユアは止まっている。

今がチャンス。


「なぜっつってんだよ!」


全力の力任せで殴る。


一回だけだが結構効いたのかな?


気絶。


え?うそ。


答えを聞いてないんだけど。


ど、どうしよう。


こいつを仲間にしたいんだけど。


できるならな。


一応待ってみるか。


縄で縛るのを忘れない。





あれ、ここどこだ

青年はぼやけたように思考する。

青年がたっていた……否。青年が浮かんでいたのは白い靄が漂う空間だった。

その中で、鮮明に映し出される過去の記憶。


「あっ」


青年――ユアは、漏れ出るように言葉をこぼした。


「……」


そこに映る記憶の中には、昔の師匠である女子3人が笑顔で立っていた。

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