龍魔帝国

「あれ?ここどこよ?」


天照アマテラスがそう言った。


ちょっと?何がどうしてそうなったんだよ




「なんだ!?」


「誰だ貴様ら!!」


騎士が発言する。


「嘘よ、信じられない。いつもの通りならあの場所に行くんだったのに」

天照アマテラスは呆けているし、ルーフィはフリーズしてる。


あ、今動けるの俺だけか。


それはちょっとまずいかな……


騎士は合計で50名らしい。


50名相手できないというわけではないが、相手がちょっと強そうだ。


30人でバテそう。


あー、さてどうしよっかな。




1、逃げる。


まあ無理かな。いけなくもないがまだ外に同じような騎士がいたら終わりだ。




2、戦う。


これはさっき言った通り。




3、話し合う。


これが一番無難なんだよな。


ううむ、話す方がいいだろう。






マークは、無意識に一番いい手を取った。


逃げれば殺されていたし、戦っても結果は同じだっただろう。


……天照アマテラスが呆けたままだったのならば。


その天照アマテラスが呆けているので終わっているのだ。


そして、マークが交渉の発言をする前に、それは起きた。




「いいよ、君たちは下がってて。」




広い空間に澄み渡る声。


その声は幼さもあふれており、とてもマークでは、従うことはできないだろう。




なんだ!?と、マークは振り向く。


そこにいるのは、8歳くらいの少女。


顔立ちは整っており、美少女といっても過言ではない。


真紅の髪はサイドポニーテルとなっていて、金色の瞳はすべてを見透かすような美しさをまとっていた。


言うまでもなく、ネツである。




「しかし……」




隊長なのか、騎士の一人が発言した。


その瞬間、空気が圧迫されるような、通常の人間では発狂しそうな妖気オーラが放たれる。




「下がってて、って言ったよね」




その威圧は騎士などすぐに黙らせる。


騎士はいうことを聞き、素直に下がっていった。




ネツはマークに近寄るために階段をおりる。


さらには、ネツに慕う者 計3名がおりてくる。




黒髪の黒目で、この中で一番めだっていないが、この中での実力はネツを除くとなれば一番高い 軍団部門長リギド




まぶしいまでの金髪をなびかせる見た目だけでは性別の区別がつかない美少女(もしくは美少年)『ネツの友人』ルキア。




白髪で、どうやったらそうなるのかわからないほどの巨乳である美女 技術部門長アナディルカ。




ここに龍魔帝国ドラゴワールドの3分の1ほどの戦力が集まっているのだ。




「はじめましてだね。私はネツ。ここの王様と魔王をやってるよ」


と、ネツが自己紹介する。


その自己紹介を聞いて、ルーフィと天照アマテラスが青ざめていた。


俺もである。


何がどうして魔王なんかとかかわることになったのかわからない。


「何が何だかわからないって顔してるね。いいよ、説明してあげる。」


そう言ってネツと言った少女が歩き出す。


俺らもそれに続いた。






連れていかれたのはまさに貴族が行くような、そんな部屋だった。


あれだ、小学校の頃、修学旅行で見に行った国会。


あそこで見せてもらった『天皇の部屋』みたいな神々しさあふれる部屋だったのだ。




落ち着かねえな。


そう思うのは日本人だからだろうか、それとも人類だからだろうか。


まあそんなことを追及している暇はないのだがな。


今のところ、天照アマテラスやルーフィも正気に戻っている。


体力全回。これでちゃんとした会議になりそうだ。


大丈夫。俺はもともとサラリーマンだったのだ。


サラリーマンの会議というのは時にスポーツより厳しかったりする。


よし。いける。




そして俺らは自己紹介をした。


みんなの名前を互いが互いに覚えながら会議が始まった。


俺としては会議といった方が日常茶飯事だったからその方が緊張しないのだ。




「で、どこから説明してほしい?」


「全部よ!!」




あ、天照アマテラスがぶっちゃけちゃった。


これは自称魔王と戦うことになるのか?




「ふむ、全部っていうのがどれくらいなのかわからないけど少なくとも天照アマテラスだっけ?あなたが生まれた時から私はあなたを知ってたけどねえ」


「そんなときから!?」


自称魔王はそこまで短気じゃなかった。なので俺も考えるとしよう。


ふむふむ、よくわからん。


それは何年前なのだろう。


「あれ、天照アマテラスっていつ生まr……」


ここまで言ったところで天照アマテラスの鋭い回し蹴りが炸裂しそうになる。


「ちょっとなにすんだよ!」


「女性に年齢を聞くなんてアンタどれだけデリカシーないのよ!!もはやパワハラよ!パワハラ!」




そうか?


そう思ったが天照アマテラスは顔を真っ赤にしている。


「ククククク、面白い事。」


そう自称魔王は言い放つ。


今度は自称魔王に天照アマテラスの鋭い回し蹴りが炸裂しそうになったが、信じられないことに片手で受け止められていた。


「まあまあ。」


となだめてはいるが、こいつ、自称じゃないのかも。


なにしろ天照アマテラスの回し蹴りは半端じゃないほどの威力を持っているから。


それこそ、通常の人間なら一瞬で気絶。最悪の場合死に至る。


それだけ強い天照アマテラスの一撃を素手で受けているのだから自称魔王――ネツの実力は本物だと思う。




「ってことで話を戻すけど、天照アマテラスが生まれた時から私は『魔王の瞳デモン・レイズ』であなたたちを見守っていたというわけよ。」


うむ、やはりわからんな。




〈魔王ネツが言った魔法:『魔王の瞳デモン・レイズ』は監視系魔法であり、座標指定できればすべての場所を視認できるでしょう〉




うん?


あれれ、反応がちょっと違う。元のように戻ってるわけでもなく自我があると思わせる反応でもない。


なんで変わったんだろう。


ちょっと理解不能だわ。




「ちなみに私はすべて見てたよ、あなたたちの行動すべて。」




……は?


待て、それってつまり――??




「それは、俺らの戦いを見ていたということでしょうか」




あれ、珍しくルーフィが敬語だ。


でも当たり前か。天照アマテラスの回し蹴りを片手で止められる相手だもんな。




ってことは今はいい。


問題はその返答だが……




「うむ。そう言ってるけど」




その言葉を聞いた瞬間俺の心はストレスで固まったかのような感じがした。


これをイメージすると、自分が正しいのに理不尽に怒られた時のような……そんなストレスである。




「では私からも質問があるんですけど、言えた身ではではありませんがあなたほどの実力なら戦争を止めることだってできたはずです。なんでとめてくださらなかったのでしょう?」




それだ、俺のストレスの原因はそれを疑問に思ってたからだろう。


それを聞くまでは納得できない。なぜって、助けられたのに人を助けなかった、という解釈になるのだから。




「それは、私は『神人鬼大戦争ラグナロク』に参加することを許されてないからね、助けたくても助けらんないんだよ」




その発言に俺はおれは切れた。


「嘘つけロリっ子!とか言って責任から逃れるつもりだろう!お前が魔王だろうが何だろうがその言い訳は通用しねーぞ!!」




ってヤベッ やっちまった。


隣ではルーフィと天照アマテラスが白い目で見てきて、前の方では黒髪――リギドが不敵に笑い、金髪――ルキアが爆笑しそうなのをこらえている。




ちょっとまずい状況かな……


そう思った瞬間の出来事である。






*ロリっ子とは失礼な!私から見ればあなたこそショタっ子なのです!*






確定な女子の声が、頭に鳴り響いた。


天才カシコサに似ているがちょっと違う。これは……?






〈確かに私に似てますね。といっても、私とは全く別の存在ですがね。解析能力、統合された能力、すべてをもってして私と天と地ほどの差があります。普通のスキルとは、比べるのもおぞましい。〉






ううむ、またこれは判断しにくい。こいつは100%自我を持っている。


むむむむむ……


とか考えてると、相手が勝手に自己紹介した。






*私の名はトヴァ、本名は『大英知王ナタトゥヴァ』ですがネツがそう言ってるのでそう名のってるのです。いいですか、ロリというのはそもそも……*






とか声――トヴァが豆知識を話し出した。


そんな話に興味はないので無視する。






という感じで会議は中断された。




その時ネツが「ロリっ子……私がロリっ子……ロリっ子……」とか何度かつぶやいた後「すべての熱を司る大いなる炎よ、その力を砲弾とし、世の中へと解き放つがいい……」とか言い出して、トヴァが






*ネツ!極大アルティメット魔法マジックは、ネツの中の魔力すべて使い切る可能性があるのでしないでくださいなのです、ちょっとネツ!やめるですーーー!*






とか騒ぎ出したのだが、それは俺の心の中にとどめておこうと思ったのだった。

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