第3話 葛藤

 「どういうこと」健司に確認すると、お風呂から上がって寝室に戻ってくる際、早紀の部屋から「別れよう」と早紀の声が聞こえたらしい。

私は聞いてはいけないものを聞いてしまった気がした。気分が滅入ってくる。それはきっと、健司も同じなのだろう。

どうすればいいのか分からず、健司に「どうするつもりなの?」と聞いてしまう。

「様子みるしかないだろう。俺に早紀は聞かれてことは知らないだろうし。」

「早紀に、何も聞かなくていいってこと?」

「ああ」

何もしないことが一番、穏便に済むのかもしれない。が、何もできないことが心を締め付ける。

「余計なこと言った。ごめん。」と健司が深くため息をついた。私も何も言うことができなかった。

「ごめん、おやすみ」健司は、布団を被って寝てしまった。明日の朝、どんな顔をして早紀と顔を合わせればいいのか、分からなくなってきた。

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