日本横断ツーリング5
「お疲れー。どっち勝ったの?」
「孝姉の勝ちですー。ドゥカティって思ったより速いんですね」とゆず季ちゃん。
「国産SS乗ってる奴みんなソレ言うよ」と孝子。
私も一服しようと振動による痺れと寒さに震える手でタバコに火をつけた所で、ユキとヒロシが到着した。
「お疲れー、どっち先着いたの?」とユキ。私とゆず季ちゃんが咥えタバコの孝子を指差す。
「ピロン」と誰かのスマホが鳴り、ほぼ同時にバイブの振動や別の着信音やらが鳴る。
「トマトとご隠居と千宏ちゃん、黒姫野尻でひと休みするって」とヒロシがライングループにきたメッセージを読み上げた。
「私なんかあったかいもん買ってくるー」と言ってユキがコンビニに。私も手がかじかんでいるので缶コーヒーを買いについていった。外に出るとちょうど辛島が到着したところで、みんなで駄弁りながらトマトたちを待った。
11時20分。トマトたちも無事到着し、10分程休憩してから目的地のラーメン屋を目指す。
直江津港にある船見公園の駐輪場にバイクを停めさせてもらい、ユキの指示で3チームに分かれ時間をずらしてお店に向かう。最初はユキ・孝子・ゆず季ちゃん。
そして、さっきのコンビニ店内でユキから聞いたのだが、第二戦はここで二人に大食い対決をしてもらうつもりだという。これなら平気でユキより食べる孝子が負けることはないだろうと。
ユキの下調べで、このお店は追加注文が無い様にして欲しいとのことだったので、ユキが少なめに頼んで、二人にそれぞれ完食できると思う量より少し多めに頼んで貰い、勝負がついて余った分はユキが食べ切るらしい。
二人全部食べ切ったらユキ足りないんじゃないのかと聞くと、なので最初に入店チームなんだと。足りなかったら最後チームともう一度食べに行くって。
あまりにもよく考え過ぎてて、逆にアホかこいつって感想しか出なかった。
ユキたちがお店に向かってから30分ぐらい経ってから私たち、私とトマトとご隠居チームでお店に向かう。
ニンジャのシートを外し、中から両側が輪っかになりビニールコーティングされたワイヤーを取り出して、ヘルメットのアゴの部分に通してからDリングと共にヘルメットロックに止める。
千宏ちゃんが「何ですかそれー」と聞いてくる。
「こうやっとけばヘルメット盗難されにくくなるでしょ。専用品もバイク用品店で売ってるけど、ホームセンターで売ってるので充分」と教える。
「ロックだけじゃダメなんですか?」
「顎紐のDリングをカッターで切られたらお終いでしょ。バイクから離れてて戻ってきたらヘルメットロックにDリング付きの顎紐がぶら下がってるって良く聞く話だよ」
「あー、確かにそうだーっ!」と納得して驚いている千宏ちゃんに「どっちにしろ千宏ちゃんのはジェッペルだから持って動くしか無いんだけどね」とアドバイスする。こんな場所でヘルメットを盗難されたら目も当てられない。
――私たちがお店に向かい始めた頃の同時刻、ラーメン屋店内。
ここからは後でユキに聞いた話。折角なのでユキの語りで。
「うぷ、ダメだ。ゴメン、ユキ。私ギブ」と孝子ちゃん。
ここに来たならまずはコレを頼め、っていうほど有名なバイク漫画のキャラクターをイメージしたラーメンと八王子でも有名な玉ねぎラーメン、そして餃子一皿が4個入りだったので各2皿、あとは人気メニューのぶた飯。なんとこの量を孝子ちゃんとゆず季ちゃんの二人がそれぞれ頼みました。
孝子ちゃんはまぁわかるけど、ゆず季ちゃん大丈夫なの? 勝負って聞いて無理してない?
私はゆず季ちゃんが食べきれないと思って、普通のラーメンのみに留めました。
だけど、孝子ちゃんの誤算が二つあって。
例の漫画のイメージのラーメン。これがスープを飲み干したら丼の底に文字が出てくるとかで隣のテーブルのバイク乗りグループが盛り上がっていたのが一つ。
もう一つが餃子のサイズ。4個といってもコレ特大4個だったのです。
それでも、ラーメン2杯にぶた飯まで食べて、餃子を1個食べたところで孝子ちゃんの〝ギブ〟宣言。
「孝姉、細いもんね」と言って、自分の注文した分は全部平らげた後、孝子ちゃんの残りの餃子を3個食べてさらにもう一皿の餃子も食べようとするゆず季ちゃん。さすがにそれ以上は私が止めた。
「ゆず季ちゃん、私餃子食べたいっ!」――
時間的にピークを過ぎていたのか、私たちが席に着いた時には奇跡的に店内が空いていた。あとでネットで調べたら普段はピークを過ぎても混んでいるそうで運が良かったみたい。
LINEでヒロシに「すぐ来て大丈夫だよ」とメッセージを送り、みんな事前に調べていた定番ラーメンと餃子を一皿ずつ頼んだ。
私たちの注文がテーブルに届くころにヒロシ達も入店して、オーダーをしていた。
食事が終わってから真っすぐ日本海側に歩いて行くと、船見公園でお腹を押さえて横になっている孝子。こんな孝子も初めて見た。
一方、ゆず季ちゃんは対照的に
私が近づくと、気付いたゆず季ちゃんがニヘっと笑って、小さくVサインを見せた。
米:『この物語は、食べものを粗末にする行為や勝負を容認・推奨するものではありません。残さず美味しく頂きました』
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