日本横断ツーリング2
朝4時30分。七里ヶ浜の海岸沿いにあるコンビニの駐車場にちらほらと集まり始める私たち。
ユキ企画のツーリングはやはり朝が早い。社会人ライダーは渋滞を避けて早朝出発が当たり前と聞くが、来年からは私もそうなっていくのだろうか。
……そもそもひとりでロングに行かないだろうな。
四年生は私、孝子、ヒロシの三人。洋子も宗則も就職先の外せない研修があり不参加。もちろん孝子はまだ現れていない。
三年生はユキのみ。トモくんはかけもちで入っているもう一つのサークルで最近出来た彼女との先約があるとかで不参加。副部長として気にはしていたが、ユキの突然の思いつきツーリングなので仕方がない。それよりも〝彼女〟っていったい! あれだけロリータ娘に燃え上がってた気持ちはなんだったんだ? これだから男って奴は、と思ってしまう。
二年生、一年生はフル参加。それに加えてゲスト参加、孝子の幼馴染みのゆず季ちゃん。勝負
「おはようございます、この間はいいお店紹介してくれてどうもです。ねぇねぇ、お姉さんは孝姉みたいにトレーナーじゃないの?」とゆず季ちゃんが近づいてきて私の背中の看板を指でつつきながら聞いてきた。
「え? どういうこと?」
「だって、それって孝姉のパパと同じチームでしょ? GentleBreezeって」とゆず季ちゃん。
「えぇ? ちょっと待って、なにそれ? 詳しく教えてっ!」
「ぇわ。凄い食い付き。私も詳しくは知らないですよ。孝姉のパパが昔そんなの着てたって、うちのパパが話してたのがなんかそんな名前だったから、てっきり同じチームなんだと」というゆず季ちゃん。本当にそれぐらいしか知らないみたい。それにGentleBreezeかどうかもあやふやっぽい。そんな話をしていたら乱れ太鼓のような排気音と共に孝子が到着した。5時出発予定のツーリングで5分前に着く性根を何とかして欲しい。
いや、遅刻して来てた頃よりは成長してるか。
みんな揃ったところで今回は初参加のゆず季ちゃんがいるので、事前に注意することなどをいつもよりも念入りに説明、確認した。
このツーリング用にライングループを作成し、そこにユキがアルバムをアップし始める。ちゃっかりとコンビニのフリーWi-Fiを利用。
「えーと、今アップしたアルバムが全体で休憩を取る予定のSA(サービスエリア)やPA(パーキングエリア)の入り口の標識画像です。今回はいつもより休憩ポイントが少ないので、疲れたと思ったら個別にSAやPAに入ってください。それから、これからアップするアルバムにルート内の全部のエリアと分岐ポイントの標識画像があるので……」と説明しているユキ。最初のアルバムを開くと、七里ヶ浜の海岸や階段と一緒に写っているアニメキャラの画像が沢山入っている。
「あれ? ユキこれ画像違くない?」と私が言うと説明をやめて確認するユキ。
「あわわ、ごめーん。一足先に来て聖地で撮ってたAR画像だわこれ」とアルバムを削除し、新たに正しいアルバムをアップするユキ。
ユキが想定している給油ポイントと休憩ポイントを説明し、休憩時には次のポイントを確認しておくことと、もし個別に休憩を取った場合、その場所をメッセージで送ることなどを説明した。
海岸線134号を茅ヶ崎方面に走り、茅ヶ崎から新湘南バイパス、圏央道と繋ぎ、八王子で中央道へ。談合坂SAで一回目の休憩だが、基本的に給油とトイレのみで出発。次の給油は諏訪湖SA、ここで朝食。松代PAで最終給油、ここも給油とトイレのみ。その後、上越高田出口までがユキの考えている勝負ポイントらしいのだが。
詳細は松代PAで説明すると私と孝子とゆず季ちゃんに耳打ちするユキ。
先頭はユキ、その次が私。間に1年〜2年を挟んで、ゆず季ちゃん、しんがりに孝子。最後尾にヒロシ。
今回は高速なので通話可能な距離を超えてしまうかもだけど、一応ユキとヒロシはインカムをつけている。
隊列を決め全員が乗車したのを確認して、出発する。朝早いこともあり、全員がスムーズに車道に出られた。
今は左手に太平洋を見ながら走る、数時間後には日本海側を走っている予定だ。
左手をタンクの上にそっと置く。
「壊れないでよね」ヘルメットの中でおまじないのように唱えた。
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