辛島COLORS 2
「もう話しちゃいなよー」と酔っ払った私。
「いや、そう言うのはじっくりで、後輩に任せてくださいよー」と酔っ払ったトマト。
「何なんですか、お二人のそのノリ」と、やはり酒に強い辛島。いや、どちらかと言うと強いというよりは自分のペースを守れるタイプといった所か。
「SOSの話ですかー?」と、千宏ちゃん。
「〝Sons Of the Sun〟ッス」
「何て意味なんですかー?」ぐいぐい千宏ちゃん。
その後、宗則が千宏ちゃんを諌めたり、トマトと私の何回も天丼が出てくる漫才のような繰り返しのやりとりがあり。
「ちょっと恥ずかしい話なんで、笑わないで聞いてくれるとありがたいんスけど」と、結局辛島が折れる感じで話し始めたんだけど、それはもしかしたらトマトと二人でタンデムで帰っていた間に二人の距離が縮まったからなのかも知れない。
トマトの性格は正し過ぎず悪過ぎない。個性が薄いと言ってしまえばそれまでだけど、だからこそ誰ともいざこざになりにくい。これはトマトの魅力なんだと思う。あと勘がいい所も。
勿論、辛島からしてみれば、学年が近いというのもあるのだろうけど。
そして、辛島は恥ずかしいと言っていたが、私は別に恥ずかしいエピソードとは感じなかった。他のみんなもそうだと思う。
辛島のお兄さん、辛島
辛島とお兄さんはお互いに父親と母親が違う、つまり血の繋がりのない兄弟。
当時いきなり十歳も年上のお兄さんが出来てなかなか心を開けなかった辛島は、辛島兄が言った些細な一言でお兄さんの事を好きになれたと言う。
「本当、大した事じゃ無いんですけど、兄貴が『俺たち兄弟になる運命だったのかもな。だって、俺とお前って二人揃ったら太陽になるじゃねーか』って」
この一言が辛島少年の心に響き、それ以来ずっと兄の背中を追いかけて育ったそうだ。
男の子が通っていく、いくつかの趣味も全て兄の影響だった。それが直近ではオートバイ。
「それで太陽マークなんだね、お兄さんが作ったクラブ看板」と私。
離婚や再婚の詳しい話は聞かなかったが、もしかしたら死別だってあるかもしれない。私が母親の浮気を発端とした両親の離婚で少しばかり拗れてしまっている事の方がよっぽど恥ずかしい話じゃないか。
いいお兄さんに出会ったんだね、辛島。
「辛島、自分で作りなよ、クラブ〝Sons Of the Sun〟アンタの色でさ」
いつか私が福原さんから言われたことだ。こうして言う側になる日がこんなに早く来るとは思わなかった。
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