素人作業の代償、終結

 途中休憩を挟みながら、約3時間。私はひたすらアルミの塊を削った。


 1時間経った辺りでリューターの回転砥石が粉になって無くなったのでトマトがホームセンターに買いに行ってくれた。金属製のビットも試してみたが、沢山削れてはいくけど、私が押さえつける力が足りずビットが暴れてスイングアームの内側に傷をつけてしまった。随分削ったとこで一度タガネで叩いてみたがサポートは割れず、シャフト近くまで削った溝を2か所作ってからやっとタガネで割ることが出来た。

 結果、サポートはOからCの形になり、インパクトでシャフトを回したらサポートとシャフトの固着が嫌な音を立てて外れ、アクセルシャフトが回った。

 念の為、C形になったサポートの隙間からシャフトにこびりついているアルミを削り、センタースタンドとパンタジャッキをセットしてリアホイールを浮かし、アクセルシャフトを打ち抜く。


「キンッ」と音を立てて地面に落ちたアクスルシャフトの音を聞いた後、私もバフッと音を立てて庭に仰向けになった。

 出てくる感想は、空が青い、利き腕の握力はゼロの2点。


「トマトー! アタシの胸ポケットからタバコ一本出してアタシに咥えさせてぇ。も、動けない。ついでに胸揉んでもいいから」

「いや、揉むほどないでしょ」と言ってタバコを咥えさせてくれたトマトの脛にゲンコツを見舞う。

「痛ッ、動けるじゃないですか!」

 タバコの箱と一緒に出したライターで火を点けてくれるトマトを見ながら深呼吸をする。


美味ふまい、ね」

 唇の真ん中でタバコを咥えたまま唇の両端を開けて青い空に雲を増やす。


「後は一人で行けるべ」と言って宗則が千宏ちゃんのスティードのキャブセッティングを始めた。


 千宏ちゃんのスティードは中古で買った時から社外品のマフラーが入っていて、エンジンはかかるがキャブのセッティングが出ていない状態。

 流石にこのメンツでキャブレーターをバラシてセッティングを出したりってのは誰もできない。千宏ちゃんはもちろんだが、トマトも辛島も、宗則が説明しながらバラしては組付けてエンジンをかけて確認するっていう反復作業を食い入るように見ていた。


 私の方は少し余韻に浸った後、オークションで事前に落としといた中古のアクスルシャフトと孝子さまが持って来てくれた社外フローティングキャリパーサポートを手順通りに組み付けて行く作業。今回は組み付け時にモリブデングリスを塗布した。


 各部の動きを確認後、チェーンの張りを調整し、ジャッキを下ろしてセンタースタンドも外す。建築足場をお向かいにこっそり返す。

 プラハンで少しずつ叩きながら集合パイプを嵌めていき、スプリング止めに苦労しつつ元通りサイレンサーまで組み付ける。


 みんな宗則のキャブセッティングに夢中。まぁそうよね。

 この後、みんなでバイク整備を肴にしてお酒飲むからイイもん!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る