ラブトーク!
「アンタせめて左右で形ぐらい整えなさいよ」と孝子。後ろでごそごそとポーチから毛抜きを出して孝子に渡す洋子。洋子と孝子は仲が良いのか悪いのか何なのかよくわからない。
「痛テっ、イテテっ、地味に痛い!」連続して眉毛を抜かれる私。
「あはは、うひひ」と後ろで笑っているユキと千宏ちゃんの声が聞こえる。
「キョウが終わったら次はアンタたちだからね」と孝子軍曹。
正座して黙ってお酒を飲み始める二人。
「とりあえずベースは整えたから、こことこの辺は書き足して。二重ももっと深くするよ」
この後、普段は入れないチーク、ファイバークリアのマスカラ、アイライン、シャドウなども入れられてみるみる仕上がっていく私の顔。それでもナチュラルに見えつつ、引き締まって見える印象でと軍曹の仕上げ。
「あとは、一度この状態で写真撮って一回落としてから今度は自分でやってみ」と鬼軍曹。ご丁寧にメイク落としシートまで持ってきていた。
「さてお次は……」と孝子がユキの方を向くが、ユキが「わっ、たしよりもー、千宏ちゃんっ! 狙った男を落とせるメイクを教えてあげてーっ」と言いながらユキの陰に隠れていた千宏ちゃんをグイグイと孝子の方に差し出す。
「わ、わたしなんてそんなに美味しくないですー!」と千宏ちゃんにとって既に孝子が何者かわからない状態。二人の傍らには既にチューハイの空き缶が4本くらい転がっている。今回完全に傍観者の洋子は腹を抱えて笑っている。
「別に取って食ったりしないって。てか、誰か落としたい男でもいるの?」と孝子。
「だだだ、大丈夫です! 自力で何とかします、できます、あと少しです……多分」と千宏ちゃん。
「……きっと」と言って急に涙ぐむ千宏ちゃん。忙しいなオイ。
「よーし、私がとびっきりのメイク術を教えてあげよう!」と孝子。
「お願いしますっ!」と千宏ちゃん。
「これで先輩も一網打尽だー」とユキ。
「え?」孝子
「わ」千宏ちゃん
「あちゃー」私
「ユキさー」洋子
ここからしばしメイク講座は中断して、千宏ちゃんの恋愛相談&進捗報告タイムとなった。
「……で、そのまま特に返事はない状態で」と千宏ちゃん。
「全く、あのドー……」「孝子ッ!」と孝子の台詞を言葉の
「やっぱ先輩ってヤマハの2ストオフ車?」とユキ。
「じゃないの?」と私。
「みるからに」と孝子。
バイク隠語についていけてない洋子と千宏ちゃんは首を傾げる。
「因みに先輩たちって彼氏とかいらっしゃるんですか?」と核心をインパクトドライバーで一気に分解しようとする千宏ちゃん。
「私は前は何人かテキトーに付き合ったけど、バイク以上に熱くなれるものがないっていうか……、ごめん嘘。私普通の男は興味ない。宇宙人とか未来人とかいたら紹介して」とは孝子。つかアンタはM男か太客しか興味ないんでしょ。
「アタシは高校の時に告られて付き合ったのに、距離が離れたら疎遠になって、なんだかなって思ってた頃に、バイク部に入って、宗則や孝子みたいな趣味人を見てると、大学でよく見かける女の子と遊ぶのが趣味みたいな男が薄っぺらく感じてきて、……はい、今はいません」
「私は、女子高時代に結構遊んでてちょっと痛い目にあったっていうか、そこから男性不信気味で、今はとにかくバイクで居心地のいいカフェ探しとかに出かけるのが楽しいかな」と洋子。
「先輩たちみんな本当にバイクが好きなんですね。私も早く免許取りたいです! あ、そうだ! 私も今教習所通ってるんですっ!」といきなりでかいカミングアウトをする千宏ちゃん。いつの間に?
「えー、やるじゃん」「え、引き起こしは大丈夫だったの?」「今、何段階ー?」孝子・私・ユキ。
「今はまだ一段階ですよ、引き起こしも宗則先輩に練習付き合って貰って。ナナヒャクゴジューで練習したから余裕でした!」という千宏ちゃん。因みに宗則のは1100だからっ。
「ん? 結局マニュアルにしたの?」
「ハイッ! 先輩とバイク屋さんに見に行って、私が欲しいと思ったバイクがマニュアルだったので」と千宏ちゃん。
「あれ、もうバイク見に行ったの?」
「ハイっ! あの次の週に先輩に連れて行ってもらって」と千宏ちゃん。これもう付き合ってんじゃあないの?
「因みに何狙ってるの?」と孝子。
「ハーレーみたいな形のホンダ車ですぅ」と千宏ちゃん。そして、宗則のことを好きってだけあって、やはりホンダ車かって表情の3人。私、孝子、洋子。
なんか忘れているような??
「……私だけー、恋愛話聞かれてないんですけどー」
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