ルージュのメッセージ

 全くもって就職活動が上手くいかない!

 学食で突っ伏していると「お疲れー」と孝子の声。珍しいな。

 最近、割と学食で顔を合わすような気がする。つまり孝子も就職課に顔を出しているってことだろう。


「就職活動どう?」と自分を棚に上げて私。

「アンタよりはいい線行ってると思うよ」と孝子。

「相方さんはどうなのよ?」と孝子が洋子に振る。

「ぼちぼちですかね」と他人行儀な洋子。


「アンタさ?」と孝子。

「んー?」と孝子の方すら向かずに私。まぁ付き合いは長い。こういうツーと言えばカーを通り越してスリーな関係の私と孝子に対して、洋子は何かしら思う所ヤキモチがあって、孝子に対して微妙につっかかり気味な態度をとっているのかもしれない。


「化粧って就職活動でもいつも通りなの?」と孝子。

「へ? どういう意味?」と質問に質問で返す。

「ま、アンタには期待できないか」と言って今日は紫色のルージュのパンクファッションの洋子を一瞥する孝子。


「一言で言うとアンタが嫌いな、〝男に媚びるメイク〟でもしたらどうよって話よ」と孝子。

「S女メイクのアンタに言われたくないよ」と私。

「さすがに私も面接の時は口紅のトーンくらい落とすって」と真っ赤なルージュで猟奇的な孝子。


「あー、私もその辺は教えるの無理ですね」と洋子。

「一昨年だっけ? アンタに悪戯でバッチリメイクしたの?」と孝子。いつぞやG.B.1の初詣の時のメイクか。

「あれ見てどう思った?」

「うん、これがアタシ? って思ったよ」と正直に答える。

「アンタ素材は悪くないんだから、ちょっとはカスタムしなよ。アンタの乗ってるニンジャみたいなもんよ」という孝子。

「……っ!」前にG.B.2洋子と宗則と行った厚木の古民家カフェでの宗則の台詞を思い出しているのだろう、必死に笑いを堪えている洋子。いっそ思い切り笑ってくれ。


「おつかれー」とA定食とさらにサンドイッチと一緒にユキ。


 三人で一斉にユキの顔を見る。

「ん? 私来た時も変な空気?」


「ユキはゆるふわOLだったよね」私

「孝子さんってメイク得意なんですか?」洋子

「アンタには教えないし、アンタ必要ないでしょ? そんなに個性重視なら」孝子

「ちょっとーなんの話ー」ユキ


「あれ? 先輩いないんですか?」と〝先輩=宗則〟発言でB定食をからくり人形のように運びつつ千宏ちゃん登場。今この場はみんな先輩だよ。


 あれやこれやと話しているうちに話題に追いつき「男を落とすメイクも必要ですよねー」と、流石にいい加減に千宏ちゃんの気持ちにも気づいているユキ。


 ユキが眼鏡のブリッジを人差し指でクイッと押し上げて

「諸君 私は化粧メイクが好きだ、この青春アオハルで行われるありとあらゆる化粧メイク行動が大好きだ。TFTでカメコが列を作った時など心がおどる。(中略)よろしい なら化粧メイクだ」と一人で演説を始めている。誰も聞いていないが。


「じゃぁ、アタシん家で」

 急遽、女子会が決まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る