ご隠居のDRZ 2

 私のニンジャについては引き続き出物待ち状態のまま2週間が経過した。

 念のため、定期的にリア周りに異常が起きていないかをチェックしつつ、リアブレーキを危なくない範囲で出来るだけ使わないようにして普通に乗っている。


 なので、ひとまずニンジャのことは置いておいて、今日は月に一度のご隠居のバイク修理日だ。

 午前中に1点メーカー取寄せになっていた荷物の受け取りがあり、これで全てのパーツが揃うことになる。


 今回の修理は付いているダメなパーツを外して、新しい同じパーツを組み付ける作業がほとんど。言ってしまえばバイクの修理も改造も全てはその作業の繰り返しで、場所や素材によって変わる組み付けのコツをきちんとこなすだけだ。

 作業上つまずくポイントは、パーツが外れないとか、壊れてしまうとかそういうものがほとんど。適切な工具と適切な使い方をしていればその問題に遭遇する確率もグンと下がる。

 私のニンジャみたいに他の車種からパーツを流用するとかしなければ普通はそれ程問題は起きない。


 午前中、例によって宗則が唐揚げくんとジャーマンドッグを持って到着。

 今回のご隠居のDRZに関しては宗則がメインで作業を行うことになっている。私と洋子はサポート。今日はトマトも辛島も手伝いに来てくれるのでもうほとんど見学で済むだろう。そして夜はバイク整備後の飲み会という、一日中幸せ間違いなしプランだ。

 就職活動? 食べたことないな、美味しいのソレ?


 宗則が到着してからすぐにトマトと辛島も到着した。約束していた時間などはなく、大体10時くらいかなぁって感じの緩い集合だったんだけど、二人とも10時前には到着した。宗則が早く来すぎたくらいで、二人の真面目さが伝わってくる。まぁご隠居は喫煙、トマトは飲酒って問題はあったが、今年から私が目くじらを立てる必要もなくなる。二人に比べると辛島は歳の離れた兄の影響か正直堅苦しいと感じるくらい真面目で、遊びがない。

 今日も特に何も言ってなかったが最初から作業つなぎを着て来ている。


 トマトと辛島に宗則からの差し入れを渡す。二人とも宗則に、横で聞いていた私まで気持ち良くなるくらいの感謝の気持ちを伝えてから食べ始めた。


 トマトには私の作業つなぎを貸す。

 辛島の自前の作業つなぎは、どこがどう違うかは説明できないが、なんとなく暴走族の特攻服っぽく見えてしまう。これはきっと着る人間の問題だろう。


 事前に使いそうな工具やケミカル等を用意して、あとは洋子と一緒にほとんど見学。洋子はスケッチブックを出して、DRZを見ながら大まかな痛車デザインのアイデアを練っている。本当にユキの言っていた石鹸水作戦でプラパーツに水彩絵の具で塗装出来るのだろうか? 割れや擦り傷で外した外装パーツを使って、夜にでも試してみるのもよさそうだ。


 今日の作業はフロントフォークのインナーチューブの交換がメイン。元々良く整備がされていたみたいで、分解も滞りなく進んで組み付け作業に移る。私のニンジャのレストア時にもお世話になった宗則持参の工具でゴムシール類を打ち込んでいく。


 宗則も後輩の育成を意識しているのか、説明は細かくしているが、実作業は主にトマトにやらせている。

 もしかしたら大学っていうのは、サークルっていうのはこういう場所なのかもしれない。社会に出る為の自発的な趣味レーション。

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