整備不良?

 何となくそろそろ解散しますかって空気を感じる。いつもそうなんだけど、やっぱりまだまだ遊び足りないし、少し寂しい。洋子に耳打ちして、この後ウチでみんなで飲むとかどうかなと相談する。

 少しだけ考えて、いいかも! と言う洋子。就職活動も微妙な進行具合で息抜きしたいと。私、そこまで頑張ってないなと引け目を感じながらもその場でみんなに声を掛けた。

「俺はいいけど、千宏ちゃん次第で一度送ってからかなぁ」

「わっ、私はキョウ先輩がいいならご一緒したいですっ!」

「千宏ちゃん、ウチで飲むってことは泊まりになるけど、お家の人は大丈夫?」

「サークルの女の先輩の家にって言うので大丈夫だと思いますけど、もし換われって言われたらキョウ先輩電話出て貰ってもいいですか」

「うん、その時は大丈夫だけど、ちゃんと男の人も女の人もいるって伝えなさいよ」

「俺も、もちろん参加でっ」と赤いトマト。

「何赤くなってんのよ、今更。ウチ来るの初めてじゃないでしょ」

「俺も山咲先輩が大丈夫なら。あと、毛利先輩は大丈夫ですか?」

「別にキョウの家なんだから私に気を使わなくたっていいでしょ」

「いや、また殴りかかられないかな、と」

「それは約束出来ないなー」とニヤつく洋子。

「ははは、毛利先輩らしいですね。俺もお世話になります、山咲先輩!」と、辛島の返事でこの場にいる全員の参加が確定した。


 まだ構内にいるであろうユキにLINEで連絡を入れてユキとトモくんが参加できるか聞く。

 すぐに既読がついて、少ししてからトモくんはバイト、ユキは行きたいけど初ツーリングで結構緊張したのでパスというメッセージがきた。そしてアプリ画面を閉じる前に立て続けに、疲れてパスってのだとみんなに気を遣わせるから家で用事があるってことにしといてー、と追加メッセージ。


「二人とも用事あるってー」とみんなに伝えて、まずは酒屋を目指して出発した。


 酒屋で各々お酒を物色する私たち。

 宗則と千宏ちゃんは緩めのサワーを物色している。私と洋子とトマトと辛島は前回盛大にやらかした訳だけど、やはり安ウイスキーの前で悩んでいた。

「まぁ、量だとこの辺ですかね?」とトマトがリッターサイズの国産ペットボトルの安ウイスキーを手に取る。

「けど、安ウイスキーって悪酔いするって言いませんか?」と辛島。

「わかる。わかるけど、アタシ達学生」

「それならさ、キョウと私で少し多めに出して少しグレード上げようよ」

「ん、それがいいかも。折角なら悪酔いせずに辛島ともゆっくり話したいし」と私。

「お、俺も少し多めに出しますよっ!」とトマト。

「え、悪いですよ」と言う辛島に「たまには先輩風吹かさせてくれって」と言うトマト。

「お言葉に甘えます」と辛島。


 結局、私と洋子でグレンフィディックの12年物を、それでは足りないだろうとトマトがリッターサイズのサントリーホワイト、辛島がトリスを買って、出来るだけトリスまで行かないようにしようと笑いながらカゴへ。

 あとはみんなで冷凍ピザトーストや乾き物を適当に選んでレジへ向かった。


 酒屋の駐車場で一度バイクに跨った宗則が、こちらを見たあとバイクを降りて、同じくバイクに跨ったばかりの私の方へやってきて、

「キョウ、チェーン張ってねーべ」と。

 跨ったままチェーンを見ると確かにたるんでいる。

「ありがと、確かにしばらくやってないかも。明日朝ちょっと手伝って」と宗則に言い、宗則も快く「いいぜ」と言ってくれた。

 とりあえず、急加速や急なエンブレをしないように意識してそのまま帰った。


 この時の私は、これが後々大変な事になるとは微塵も思っていなかった。

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