八王子ラーメンツーリング3
少し走るとユキが国道から逸れるルートを進行する。基本ユキ任せなので特に疑問もなくついて行く。
ユキがウィンカーを出して向かった目的地は、パッと見はバッティングセンターかゴルフの練習場のような造りの場所で、バイクを停めてからもう一度よくみると車の中古ホイール屋さんのようだった。
「みなさーん、お腹は空いてますかー? デザートもあるんで別腹女子も大丈夫ですよー」とヘルメットを脱いだ本腹ユキが言う。
宗則のCBのタンデム席から降りた千宏ちゃんが、「うわー! 何ですかココー! すごーい!」と言ってはしゃぐ。
車のホイールにばかり目を取られていて気付かなかったが、一面にレトロな自動販売機が並んでいる。カップラーメンやうどん、ハンバーガー、かき氷まである。
「食休みも兼ねて、ここで少し休憩してから行きましょー」とユキ。何故食休みで更に食べるのかさっぱりわからないが、そういう突っ込みよりも好奇心が勝ってしまう。
とりあえず、小一時間の休憩となった。
宗則はタンデムから降りて興奮した様子の千宏ちゃんにそのままのテンションで拉致されてしまい、腕を掴まれてグイグイと引っ張られている。人生で初めて使うかも知れない単語だが、宗則のまさに〝狼狽〟している状態ってのをみた。
私たちは洋子と、何故か洋子と打解けている辛島とトマトと一緒に自販機を冷かして周った。向こうは、宗則を千宏ちゃんが引っ張り、一緒にユキとトモくんがなんとなくついて周っている感じだ。そして動くたびに増えていくユキの食べ物たち。
私たちもせっかくなのでたこ焼きやおみくじやココアシガレット(これは私と洋子のみ)を買って楽しんだ。
ひとしきり楽しんだ後、再出発前に、ユキから休憩したい時は早めに千鳥で後ろに伝えていって欲しいと言われた。最後尾のトモくんから先頭のユキにインカムで連絡をするそうだ。ここからは下道メインなのと、今後のツーリングのための試験的な試みだとか。
大学のある茅ヶ崎までは、メインの国道129号は使わず、県道を使ってのんびりと繋いでいった。渋滞回避の目的もあったのだろうが、いかにも田舎道であったり工業道路であったりを経由するある意味、神奈川を堪能する道のりだ。海老名、綾瀬、寒川を経由して大学の駐輪場に着いた。
いつも通りユキの締めの言葉で一応の解散になったが、今回ショートツーリングでまだ夕方早めということもあって、少し駄弁ったりしてだらだらと余韻を楽しんだ。
それにしても、ユキは常に色々と考えてくれている。バイクサークルでの色々なことが新鮮で楽しい。
少しして、ユキとトモくんがジェッペルを戻しに部室へ行くついでに、テラスで少しだけ今回の反省会と今後のプランなどを話し合ってから帰ると言い、構内に向かった。
そのタイミングで千宏ちゃんもバス停に行くので一緒に行こうとした。方向を聞いてなかったけど、私が送っていってもいいのかもと思い声を掛けようとしたが、脳裏に今朝の洋子のふくれっ面が浮かんできて、すぐに言葉がでなかった。
「千宏ちゃん、良かったらバイクで送ろっか?」
私が躊躇している間に先に声を掛けたのは意外にも宗則だった。
「いいんですかぁ!」と満面の笑みで元気いっぱいに答える千宏ちゃん。辛島以外、普段の宗則を知っている他のメンツは驚きで
固まった表情のまま「じ、じゃあ後は若い人たちで、、、」と言いながらぎこちない動きで部室に向かうユキに「ちょっと、ユキ、メットメット!」と声を掛け、ジェッペルを受け取って千宏ちゃんに渡した。
こんな澄み切った
多分私は、すぐに機嫌が悪くなる洋子や、いつも悩んでいる自分に飽き飽きしていたのだ。
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