八王子ラーメンツーリング

 八王子ラーメンツーリング当日朝、駐輪場。

 今回の参加者は、私・洋子・宗則・ユキ・トモくん・トマト・千宏ちゃん・辛島の8人。当初は千葉の山奥に行く予定だったが、千宏ちゃんがタンデムなのと今年度初で早い時期でのツーリングと言うことで、ショートツーリングになった。


 ぼちぼちと集まり始めた頃、ユキから千宏ちゃんをタンデムしてくれないかと頼まれる。しかし、千宏ちゃんは不満そう。洋子はもっと不満そう。

「宗則は?」

「先輩固まらない?」

「わかるけど、ちょっと話してくる」と言って宗則と相談する。宗則が女の子をタンデムするとか想像つかないが、洋子の機嫌の方はリアルに想像がつく。それにそもそも私より宗則の方が運転技術がある。その辺りを押しながら話をして宗則を納得させた。


「ユキ、宗則オッケイ」

 私の声に洋子が元通り、千宏ちゃんは上機嫌に。

 この私の女子に対する圧倒的なウケの悪さ、……とは思わない。流石にそういう事かと気付いてトマトに視線を送る。トマトが気まずそうに目を逸らしながら、空気でそういう事ですと伝える。


 そうか、顔まで憶えていなかったが千宏ちゃんって前に宗則がガス欠助けた女の子か。きっとそうだ。それで宗則のことが気になってるのか。

 確か、今って原付スクーターだったよね。

 そうすると、もしバイクの免許を取る事になってもビッグスクーターとかになるのかな? 見た感じ背も低そうだし、あんまり重い車体だと厳しいよね。……オススメはエプシロン150かな。


「今日は行きは寒川から圏央道で八王子まで一気に行きます、で帰りは寄り道しながらのんびり下道ツーリングでーす」とユキ。

 なるほど、いいプランだ。一気にワープで美味しいものを食べに行き、ゆっくりと気軽に気になったところで寄り道、正にバイクの良いところを千宏ちゃんに知ってもらいたいってところか。


 そして今回からトモくんがしんがりを務める。車線の合流時の車止めや、速い車が来たら譲るなどと役割が多いのでしんがりは熟練者がやった方がいい。トモくんは正直孝子ほどの俊敏さは無いがサークルのツーリングには全参加してるので、見た目は頼りないが案外適任者かもしれない。さらに、これは実にユキらしいのだけど、先頭のユキとしんがりのトモくんは今回試験的にインカムを導入している。

 TT-Wは古い体質のサークルだったが、去年からLINEを使うようになったりして新しい風が吹いていると感じる。


 宗則がリアサスのセッティングを変えている。タンデム用に少し調整しているみたい。私のも出来なくはないけどちょっと面倒くさい、安いのにしたからね……。

 タンデムはやはり宗則の方が良かったと思う。


 千宏ちゃんが宗則に会釈してCBのタンデム席に跨がる。宗則が右手はタンクに置き左手は宗則のベルトを掴むように説明している。


 バイク紳士にはロマンスが足りないようだ。いっそ抱きついちゃえ! と心で千宏ちゃんに念を送る。

 既にメットは被っているが、開け放ったシールドの下、トマトと目を合わせお互いに「ありゃダメだな」って表情をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る