　四月半ば過ぎゴールデンウィーク前。

「新入生歓迎の飲み会をやりたいんですけどー、先輩とキョウちゃんは出られますかー？」とユキ。

「は？」と私と宗則。

「だーかーらー、新入生……」

「いや、そこじゃなくて。入ったの誰か？　こんな早く？」

「なんかー駐輪場でトモくんとトマトくんが一緒にいるときに声かけられたみたいでー、志願兵ですよ、志願兵。その子一年生だけどー、一浪しててもうお酒が飲めるらしくって。あともう一人トマト君の友達が飲み会でお話聞きたいってー」とユキが説明する。

　……トマトの誕生日は私知らないからこのまま聞かないことにしよう。

　新入生と飲み会で顔合わせってパターンは初じゃないかな、新鮮だ。そして私も宗則も全く同じことが頭の中に浮かんでるはず。ほぼ同時に口を開いた。

「バイク何乗ってるの？」×２。

「なんかCB400って言ってましたー。宗則先輩良かったですねー、ホンダ党員増えますよー」と言うユキに「別にホンダ党って訳じゃあないから。それにそこまでだと肝心な絞り込みができないから、SFとSSでだいぶ違うから……」と言いながら「あっ」っと何か思い出した様子。

「あれ、駐輪場にガチガチに盗難対策されたCB400Fが今年から増えてた！」とハイテンションな宗則。これでホンダ党でないとか説得力ゼロなんですけど。

「渋いとこ来たなー」と宗則。渋いって表現はアレかな。

「もしかして旧車？」と聞く。

「そうそう、族車人気ランキング５位以内には入るんじゃない？」

「なるほど、だから盗難対策か。つかひさびさにバイクガチ勢じゃん」

　旅の相棒として、普段の足として、峠や林道でのスポーツツールとして、バイクとの付き合い方も色々あるけど、これは単純にバイクそのものが好きってパターン。

　ユキによると、歳の離れたお兄さんがいてそのお兄さんの影響でバイクに乗り始めて、バイクもお兄さんのおさがりだとか。お兄さんはお兄さんでやはりCBの750ccでKってのに乗ってるとか。FやRやSじゃなく、Kってアルファベットは珍しくて、本人と話をしたユキも覚えられたと得意げな顔。スマホで見た目を調べて、宗則に詳細を掻い摘んで説明してもらった。宗則が今度は今度でKの後ろの数字が重要らしく、そこを聞きたかったと言っていた。

　新入生は兄仕込みのガチ勢でしかもホンダ党であるのは間違いないだろうと確信した。