第31話
マナに連絡しようと思って連絡先を開いたが、今日は活動だったことを思い出してそのウィンドウを閉じた。サイクロンのメンバーに面識はあるが、さすがに部外者の俺がギルドの活動を邪魔するのは悪い。しょうがなく今日はこれまで通りぼっち、もといソロで狩りに出ることにした。
目的地はこの層の攻略区。まだ俺がプロートンに来て日が浅いため、攻略区にはまだ一度しか入ったことがない。
俺はまた中央広場に戻り、石像に触れる。
「プロートン」
トーテムタワー第一層に戻り、その足で攻略区へと向かう。道中、戦闘区にMobが多くPOPしていたが、今はそいつらを全無視。
昨日は入らなかった巨大な扉に触れると、『攻略区に入りますか?』というメッセージが表示され、迷うことなくyesを選択。
間を置かずして扉が重い音を立てて開いていき、攻略区に足を踏み入れた。
攻略区は戦闘区と比べて遥かに危険度が高い。Mob自体の強さもそうだが、戦闘区にはいくつかのトラップが設置されていることが多い。例えば、アイテムが使えなくなるもの、Mobを呼び寄せるもの、直接ダメージを与えてくるもの、しばらくの間部屋に閉じ込められるものなど、種類は多様だ。しかもこれらの発動条件も様々で、宝箱を開けると発動したり、部屋に入るだけで発動したり、見えないよに床に配置されていて、その上に乗ることで発動したりする。宝箱のように自力で回避可能なものならともかく、部屋に入っただけで発動されると回避不可能だ。だから攻略区に入る時は万全以上の準備が必要なのだ。
昨日でLvも72に上がり、最前線の攻略区の二階ぐらいまでなら万が一トラップにかかったとしても致命傷にはならないはずだ。一応事前に掲示板をみて、現状出回っているトラップの情報も確認はしておいた。それでも最初は様子見に一階からだ。
攻略区の中は照明一つない暗めの場所だが、それでいてある程度の視界が確保出来る明るさを保っている。そんな器用なことが出来るのはさすがゲームといったところか。床は石畳のようになっていて、壁は暗めの色のコンクリートで固められてる。
掲示板には一階から三階までのマップも掲載されていて、そのデータをスクリーンショットしていつでも見られるようにしている。
ぱっと見た感じ、二階へのルートはあまり複雑ではなく、突破しようと思えばすぐだ。しかい今回の俺の目的はこの階のMobを相手に自分の実力を試すことだ。当然トラップには気をつけながら寄り道もする。
「さて、早速戦闘開始だ」
攻略区に入っての第一村人はスケルトン。右手に片手剣、左手に盾を装備している骨のMobだ。SSを使ってくるという点では気を付けなければならないが、気さくのような行動を取らず、堂々と剣で勝負を挑んでくるタイプのMobなので俺も相手をしやすい。
『身軽』の上位スキル、『機敏』の影響で走る速さはこれまで以上に速くなり、一気にスケルトンとの距離を詰める。
「せぃっ!」
俺の構えに反応してスケルトンが縦を構えた。あの盾で防がれるとダメージが半減するとかいう厄介なことをされないように足を狙って剣を振るう。相手が骨がゆえに硬さで剣が弾かれるが、その反動を利用してテイクバックを取り、軽くよろめいたところを今度はスケルトンが右手に持つ片手剣に狙ったフルスイングをする。
キイィィィィン、と心地よい音が響いてスケルトンが目に見えて体勢を崩す。
「『スクロールスクエア』ッ!」
その隙を狙っていた俺は両手剣四連撃技で一気にスケルトンのHPを削りにかかる。
硬直時間に入るが、スケルトンが体勢を立て直したのが俺の硬直が解けたと同時だ。そしてスケルトンは片手剣単発技の『スラッシュ』の構えに入った。片手剣用でも両手剣でも大体同じで、最初のうちはよく使っていた技なので判りきった攻撃に当たることなくかわし、反撃に出る。
硬直に入った隙に背後に回り込み、急所である首を狙って水平斬りを打ち込む。
クリティカルヒットし、スケルトンのHPが残り三割に入る。
硬直が解けたスケルトンはすぐさま振り向き、剣を振ってくる。それを『ステップ』で避けてとどめをさしに胴体に水平斬りする。しかし攻撃をした場所が盾に近かったせいで盾でガードされてしまった。
与えたダメージは一割程度に軽減され、さらに盾で防がれた剣が弾かれて俺のバランスが崩れる。そこにスケルトンが心臓付近を狙って突きを繰り出す。
体勢の悪い俺は強引に『回避』でそのまま右に動いたが完全には避けきることが出来ず左肩を掠めてHPが一割減らされる。
再びお互いの体勢が整った所でスケルトンがまたしてもスラッシュを使ってきた。今度はそれをかわさずに
スケルトンを倒したことで得た経験値でレベルアップし、ファンファーレが脳内に鳴り響き、ウィンドウにも表示が出る。
ファンファーレが鳴り止むと今度はレベルアップによる新なスキル習得を報せる物に変わった。
『スキル
遂に
少し探して見つかったメイジスケルトンをターゲットにする。メイジスケルトンはさっきのスケルトンと攻撃手段が異なるだけで、外見は持っていた片手剣と盾が杖に変わるだけだ。
普段近付くとすぐに気付かれるメイジスケルトンにタゲられないようにそっと近付く。いつもなら近付き始めて二、三歩でタゲられるのだが、三歩目でもまだタゲられない。
だが、さすがにSLvが1ということもあって後二歩進んだところでタゲられてしまった。仕方ないから狩ってやる。
メイジスケルトンはその名の通り
まずは火で攻撃。
「ファイヤーボール!」
火の球が現れ遅くもないが速くもない速さスピードでメイジスケルトンに向かって一直線飛んでいく。
避けられることもなく命中しHPをけずる。が、やはり初期魔法ということで与えたダメージは一割いったかいってないかというほんの僅かなものでしかない。
今度もメイジスケルトンのほうも魔法の体勢に入った。メイジスケルトンの魔法は、出る直前まで何が出るか判らない。しかも全属性の魔法を使うことが出来る。だがボスではないため初期か二番目の魔法に限られる。
それでもバリエーションが多く、直前までに出てくる魔法を読むのは不可能だ。だから距離をとって回避をしながら反撃に徹するか防御を捨てて確実に攻撃するかのどちらかの方がいい。
俺がとったのは後者だった。その理由は『光防』があるからだ。二番目の魔法をまともにくらえばさすがに少々ダメージを受けてしまうかもしれないがそれでもあまり大したことは無いだろう。
そうなれば早速魔法を連射しまくる。
「ウイングカッター」
まずは風の初期魔法を放つ。勿論命中しもう一割近く削る。
しかしメイジスケルトンも反撃してくる。この至近距離で出てきたのは俺もよく使っていた『アクアスプラッシュ』。
俺に命中したが光のバリアに阻まれ、減ったHPはメイジスケルトンより少ない一割未満。二番目の魔法でも一割とくらわなかったから楽勝だろう。
その後も土魔法『サンドショット』や氷魔法『アイスボール』、光魔法『ライトレーザー』を使い、HPを五割近く削った時、二度目のメイジスケルトンの攻撃が来た。
出てきたのは風魔法『パワーストーム』。名前は知っているが実際にどんな攻撃なのかはよく知らない。
結果、それが仇となり、予想外のことになってしまう。
『パワーストーム』は直接攻撃ではなく、間接攻撃だった。
『パワーストーム』をまともに受けた俺は強い風の力で身体が浮き、背後の壁まで一直線に飛んでいき激突した。
「ぐはっ!」
正面には破壊不能オブジェクトの警告が現れる。そして更にはスピードもそこそこあったためHPも二、三割持っていかれる。
『光防』を取得しているのに効果も発揮しない。それにこれはまだ二番目に覚える魔法のはずだ。なのに俺のHPを二、三割減らせるぐらいのスピードで飛ばすなんて……強すぎる。
メイジスケルトンの残りHPは約五割。『ジャンプ』で一気に一度開いた間合いを詰め、再び攻撃を開始する。
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