第21話
店を出るとすぐに、マナから着信が入った。
デスゲームげ通告されてから連絡が取れなかっただけに、俺はすぐさ通話ボタンを押した。
「愛美! 大丈夫か?」
『お兄ちゃん、大変なことになっちゃったね……ごめんね……私が誘ったばっかりにこんなことに巻き込んじゃって……』
うっかりリアルネームを口走ってしまったが、妹に動揺はなく、むしろ力強くて驚愕を隠せなかった。
「こうなったのは辛いけど、別にマナが悪いわけじゃないから」
『それでも、ごめんなさい』
「それはいいから。マナはこれからどうするんだ?」
『私は……私は戦うよ』
何となく予想できていた答えに俺は驚きはしなかった。だがそれだけの事で、兄として妹が前線に出ることを容認できる訳では無い。
「そんなの危険すぎるだろ。この世界で死んだら、元の世界でも死ぬって、あれはハッタリなんかじゃなくて多分事実だ。だから戦うってことがどういうことか分かるだろ」
『うん、分かってるよ』
「じゃあなんで!」
『ごめんね。私だって死んじゃうのは怖いし、死ぬって考えたらやっぱり体が震えて言うことを聞かなくなるけど。でも、サイクロンは最前線をいくギルドで、私はその一員で、このゲームのクリアのために動く責任があると思う。だから私は、私たちは話し合ってこのゲームのクリアを目指すって決めたんだ』
そんなことを言われて誰が妹を止められるというのだろうか。俺の内心はすごく複雑だが、ギルマスがエリネスだと考えると信頼はおける。
ただ、攻略に気を取られて警戒を怠ってほしくない。命は他の何とも変えられないただ一つのものなのだから。
そのことをマナに言うと「大丈夫だって。お兄ちゃんは心配性だなぁ」と笑いながら返されてしまった。だがそれで気付かされた。現実ではまだまだ中学生の愛美だけど、こっちの世界では俺より先輩でトッププレイヤーのマナなのだと。だからマナはこんな状況になっても折れない精神力がある。強いとは、マナみたいなことを言うのだろう。
知らないうちに妹の成長を感じて感慨に浸り、俺はマナを信じることにした。
「分かった……気をつけて……という言葉はマナには必要ないか。でも何かあったら言ってくれ。役に立てるかは分からないけど、駆けつけられるように頑張るから」
『うん、ありがとう、お兄ちゃん。これからしばらくみんなでレベルを上げまくるからあんまり連絡を取れなくなるかもしれないけど』
「あぁ、分かった。絶対に無理だけはするなよ」
『うん。じゃあ、またね』
マナのその返事を聞いて俺は通信を切った。
「さて……俺はどうするかな」
とりあえずそんなことを口にしたが、俺の中で答えは既に決まっていた。
マナと同じように、俺も最前線に出る。それしか選択肢はない。
フェルにあんなこと言ってしまった以上、何もしないわけにはいかない。何より、妹が最前線に出るというのに、俺が安全圏にいればマナに何かあった時に駆けつけることが出来なくなる。エリネスたちと一緒なら俺に出来ることがあるか分からないが、兄として、妹に近い場所で見守りたい。
もし本当にマナに何かあれば、俺が駆けつけてやれるように。
死ぬのは怖いけど、やるしかない。死なないためには死ぬ気でレベルを上げ続けるだけだ。それが安全圏で過ごす次に安全な策だと言えるだろう。
「さて、行きますか」
他のプレイヤーがMobを倒してしまい、レベリングの効率が悪くなってしまう前に早く行ってLvを上げるため、グラスガーデンの東にある中央凍土に向かうことに。
中央凍土は氷雪地帯になっていて、氷属性の魔法を使うMobが多い。Lvは今の俺のレベリングにはちょうどいいぐらいだ。それに防具と武器はフェールの自信作がある。今から最前線に出るためにはマナたちよりもずっとレベリングを続けなければならない。俺の目的はマナを守れるだけの強さを手に入れること。まずはそこからだ。
そのためには、もう行動するしかない。怯えていたってしょうがない。
俺は改めて決意を固め、Lvを上げるために一歩を踏み出した。
name:NEST
Lv14(30/850)
HP:753/753
MP:50/50
STR:16
VIT:10
INT:14
MND:8
AGI:14
スキル
『魔法』SLv10『魔法技術』SLv10『両手剣』SLv8『両手剣技術』SLv8『ジャンプ』SLv6『ステップ』SLv11『回避』SLv8『水魔法』SLv10『身軽』SLv12『光防』SLv4
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