第19話 お兄ちゃん=?

そういえば、お兄ちゃんもふわふわ、すうーって動くなあ。

いつも玄関の横の場所にいるよね。


「ママには見えないけど、他にもお友だちがいるの?」


そうママに問い詰められても、困るなあ。

なんてせつめえしたらいいのかな?


お兄ちゃんはいつも、

「あそぼあそぼ!」ってぼくを誘うんだ。

一緒に遊べば楽しいからね。いつも一緒。


しりとりもできるよ。けっこう強い。

「こうさん!」って言ってもなかなか許してくれない。


ママがいない時。

お兄ちゃんと遊んでるとあっという間に時間がすぎる。

(時計はよめないけど、時間がすぎていく感じはわかるよ)


だから一人じゃないんだ。


ママはいつも、ぼくが一人で心配、って言うけどそれは違う。


一人じゃないんだよ。


ずっとまえ、新一年生の時かな。


学童に何曜日に行くのかよくわからなくって、

学童に行くはずの日だったのにうちに帰ってきちゃった時があった。


そのころはまだ家の鍵も持ってなくて、

ピンポーンってしても家に誰もいなくって、

とってもこわくなったよ。


(ママはその日パートのお仕事だったんだ)


でも、お兄ちゃんがぼやーんって家の中から出てきて、


「大丈夫、大丈夫!」って

言ってくれたんだ。


「でも、車には気を付けないとだめだよ!カイ!」

車?なんのこと?


そして、

「大丈夫、大丈夫だから、ここでちょっと待ってて!」

って言うと消えちゃった。


しばらく玄関のドアの前でぼーっとしてたら、


学童の山口先生が


「カイくん!みいつけた!!」


って言いながら近づいてきて、

ぼくのことぎゅう!ってしてきた。


「ママにも

『カイ君がゆくえふめいです。』って電話しちゃったから、連絡しときゃなきゃね。

ママとおーっても心配してたよ。良かったわあー。」


そう言って山口先生はその場でママに

「カイ君、発見しましたよ!」

って元気に電話すると、


「さあ、行きましょう!おやつの時間に遅れるよ!!」

って言って手をつないでくれた。


(手をつなぐなんて恥ずかしいけど・・・その時は心配なきもちがのどまで来てて口から何も出てこなかったから、助かったよ。)


ついでに言うとね。


別の時。

学童に行ったらだれもいなくて、山口先生だけがいた。


この時は、ほんとうはおうちに帰る日だったのに学童に行っちゃったんだ。


山口先生は落ち着いて

「カイ君、勘違いしちゃったかな~?どうする?しばらくいる?」

って聞きながら、ママに電話をかけ始めた。


そして、ママが電話の向こうで大げさに

「えー!ほんとうですかー?!!」

って驚いてるのが聞こえてきた。


「ちょっと曜日を間違えちゃったみたいですね。カイ君。

良くあることですから。大丈夫ですよ。」

お母さん、お迎えに来られますか?」


電話のあとに、ママが慌てて迎えに来た。

ばつが悪くてママのことちょっとつき飛ばしちゃった。


だって、授業参観の土曜日は学童行かない、ってわからなかったんだよ。

教えといてよ!


またお腹がぐるぐるしてきた。


ママが玄関のカギを開けてようやく家の中に入った時も

お腹の調子はいま一つだった。


ランドセルも体操服も給食袋も、

全部ぐるぐる振り回しながらぐうーん!って感じで玄関先の靴の上にばらまいた。


そうしたら、お兄ちゃんが出てきて

「お帰り!遊ぼうぜ!!」

ってニコニコしながら言ってきた。


「今日は何して遊ぶ?プラレール?クワガタ?お絵かきでもいいよ!」


そう言われたら、


「何して遊ぼうか?」

って考えてわくわくしてきた。


ママはうつむいて玄関に落ちてる教科書や体操服を拾ってる。

なんだか心配になってちょっとの間ママのこと見てたけど、いつもとおんなじ。

鼻歌を歌いながら、洗濯機に洗濯物を次々入れてた。


ぼくはお兄ちゃんと笑いながらクワガタ対カブトムシごっこをした。


楽しくてあっという間に時間がすぎたよ。

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