第11話 まことくんとかすみちゃんとぼく

まことくんは、ぼくのことを弟みたいに世話する。


先生が

「紙を二つに折って、この色紙を張り付けて下さい!」

って言うと、自分のをする前にぼくのをやりにくる。


いつものことだから京子先生も何も言わない。


でもね。

ちゃんと先生の説明通りやってくれるならいいんだけど、

たいていはそうじゃないんだ。残念ながらね。


表側に折るんだったのに(みんなはそうしてる)

反対側に折って、しかものりをべろべろにつけて

変なとこに色紙をくっつけちゃったり。


ママは

「あら?かわいい。

カイの世話焼いてくれるなんて、ありがたいわねえ~。」

って言うけど、違うんだ。


まことはお兄ちゃんよりずっとちっちゃい。

(らしい。聞いた所では)


うちではお兄ちゃんに世話をやかれてるから、

学校ではぼくのことを世話やくことにしたんだ。

うちでの自分みたいにね。


親切でしてるわけではないよ。

なんとなく格好つけてるだけなんだよ。


どっちにしても、

まことが何も手を出さなかったら、

反対側からかすみちゃんが顔出してくるけどね。


ママも

「かすみちゃんっていい名前ねえ。

それに、かわいいわあ。

カイとおんなじくらいちっちゃいのに、しっかりしてるわねえ。」


ってべたぼめ。

ママってほんとめでたいよ。

かすみちゃんもそんなんじゃない。


なんだかしらないけど、ぼくのことがとっても気になるみたいで、

やたら心配そうな顔で

「大丈夫?どうしたの?大丈夫?」って聞いてくる。


そんなに顔をのぞきこんでつぎつぎ質問されても困るよ。


なんて答えていいかわからないし、

いつ答えていいかもわかんない。


「・・・。」


だまってると、かすみちゃんはどんどんぼくの机に乗り出してきて、

「うんうん、ここまではノートにかけたんだね。

じゃあ次は・・・これだよ。これ。

これやって!」


ってめいれいしてくる。


まったく。

やんなっちゃうよ。

だってこんなことたのんでないもん。


ぼくがはっきり答えないからそれがダメってママは言う。


でもきっと、答えても

まこととかすみちゃんは顔をのりだして

ぼくにめいれいして、世話を焼いてくる


そう思う。


この前、京子先生がママに言ってるのが聞こえちゃったんだ。


「まことくんはカイ君のお世話という役目を見つけて、

生き生きとやってます。

みんなにもその役目を認められてます!」って。


まこともかすみちゃんも、見た感じとは違うんだよ、ママが思ってるのとは違うんだよ、という話をさんざんした後にママが言ったのはこれ。


「お世話してくれてるのに、理由はどうでもいいでしょ!もっと感謝しなさい!」


なんだかイヤんなっちゃう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る