第10話 鼻血王子 -後編

すると、横を歩いてた中学生が心配そうに近づいてきた。


「きみ、新一年生だね。大変だ!先生に言ってくるね!」


そう言って小学校に向かって走り出した。


沢山の血にまみれたぼくの手と顔にびっくりしたみたいだ。

ぼくは新一年生じゃあないけどね。


でも訂正する間もなくぴゅーってすごい勢いで走って行っちゃった。


しばらくして、京子先生が走ってきた。


「カイくん?鼻血出でちゃったんだね?大丈夫?」


大丈夫なわけない。


でも、何を言っていいかわかんないから、うんうん、ってうなずいた。


「学校に戻って保健室に行く?それとも学童に行く?どうしたらいいかな?」


って京子先生が聞いてきた。

周りにはだれもいない。みんなとっくに学童に着いてる時間なんだ。


わかんないから黙ってたら、


「じゃあ、一緒に学童まで行こうか?」


って、学童までついてきてくれた。そして、大きなちり紙で顔を拭いて、鼻には新しいティッシュを詰めてくれた。


学童では、山口先生が


「まあ~どうしたの?ケガしたの?何したの?」って質問攻め。

代わりに京子先生が話してくれたから助かった。


「ではおうちの方に連絡しておきます」

って山口先生が言ってたのが気になったけど、鼻血も止まってすっきりしたから、もう平気。


いつものとおりおやつを食べて昨日途中まで読んだマンガを読み始めた。


あっという間におうちに帰る時間になった。


うちに帰ってみると、パートから帰ったママと学童の山口先生の会話が聞こえてきた。

「学校の先生がお忙しいのに学童までついてきてくださったんですよ。・・・では、様子を見てあげて下さい・・・」

「・・・はい、わかりました・・・。」

そんなような会話。


またまたママの心配そうな顔。

一瞬そう見えたんだけど、違った。


「よく鼻血でるね。鼻血王子だね。」


ニヤリと笑いながらそう言うんだ。


またお腹のぐるぐるがとまらなくなって、ママに頭突きをした。


一回、二回、三回・・・、


二人で取っ組み合いのけんかみたいになっちゃった。

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