第9話 鼻血王子 ―前編

何事もなかったように次の日学校の一日は過ぎた。


みんなぼくがぐあい悪くなって保健室に行ってから帰ったと思ってるから、おもらしのことは知らない。あれ?って思った子も知らんふりしてくれてるみたいだ。


クラスでぼくは一番ちっちゃい。

隣の席のまことくんも、いつもぼくのせわをやくし、

女の子たちもなぜかぼくのまわりでいつも心配そうな顔して集まってくる。


ふう。今日もやっと学校の一日が終わった。

もうすぐ嫌いなプールが始まるって京子先生が言ったのが

ちょっと気がかりだけど、なんとか一日終わった!がんばった!


そんなわけで、ランドセルをしょっていつものように学童クラブに歩き始めた。


学童は学校から歩いてちょっとのとこにある。

ママはパートのお仕事してるから、学童でおやつを食べて、マンガ読んで遊んでるうちにいつも帰りの時間になるんだ。


色んな子が話しかけてくるけど、関係ない。ぼくはぼく。

お腹で感じることはあるけど、

「えーっと・・・」って

言うこと考えたりだまったりしてるとみんなあきらめて走って行っちゃう。


一人でゆっくり歩くのがぼくのやり方なんだ。

それってダメなことなの?

ママはいつも「お友だちと遊びなさい!」って言うけど。


一人ってだめ?


そうやって一人で学童に向かって歩いてた時。

なんだか鼻の穴からすうーってへんな気持ちが伝わってきて、いやな感じがした。


鼻血だ!


急いでポッケからティッシュを取り出してさっとふいた。

一枚。二枚。

まだ止まらない。


もっともっと沢山の鼻血があふれてぽたぽた垂れてきた!


どうしよう!ティッシュがもうない!


ぬらぬらの鼻血がどんどん垂れてきて気持ちが悪いし、

顔にも手にも血がつきそう。

あせって泣きながら走ろうとしたけど足がもつれて早く走れない。


その間にもぽたぽた鼻血が右手にも左手にも垂れてきた。

右手も左手も真っ赤だ!どうしよう!!


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