第6話 おなかの中の鬼

家に着いたけど、まだおなかがぐるぐるしてどうしていいかわかんない。


これはね。お腹の中に鬼がいるんだって。絵本に書いてあったよ。

ぼくのお腹にも多分青い怖―い鬼がいるんだ。


いま鬼が暴れてるみたい。お腹の中のことはぼくにはどうしようもない。

だってぼくの『中』の話だもんね。『外』のぼくにはどうしようもないことなんだ。


『外』のぼくは玄関でランドセルを振り回して、「うお~!!」って言ってみた。

そうしたら、少おし気持ちがすっきりした。


ママは最初はびっくり、そしてその後ちょっと泣きそうな顔で、ばらまいた教科書やノートを片付け始めた。それを見てたら、なぜだかまたお腹がぐるぐるしてきて、どうしようもなくなってきた。


ママのおなかをどんどんたたいたら、教科書とノート、“おみやげ”がまたその辺にちらかって玄関先はぐちゃぐちゃになった。


玄関は、もとからそこにあったものと教科書やノート、それとあと“おみやげ”でぐっちゃぐっちゃの大賑わい。ママはいつも、

「どうしてこんなに散らかってるの?!」とか

「片付けるの大変なんだからね!!」

って何かしら文句言いながらいつも片付けてる。


また何か言うんだろうなあ・・・気が重い。

そう思ってちょっとゆううつな気持ちになってきた。ぐるぐるがやっとおさまってきたと思ったら、また違う気持ちが来ちゃったよ。


するとママは、


「洗濯しようかな!」


って突然言ってすっくと立つと、玄関横の洗濯機の前に行ってしまった。


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