第5話 あのね、わんこ

すると、前から犬の散歩をする田中さんが歩いてきた。


このわんこは『雑種』っていうんだって。

だいぶお年寄りで足が悪い。びっこをひいてるから歩くのに時間がかかるんだ。

でも連れてる田中さんもだいぶ歩くのゆっくりだからどっちもどっちだね。


ママが

「こんにちは。だいぶ暑くなってきましたね。」

ってあいさつすると、

「そうですねえ。だいぶ暑いですねえ。お気をつけて。」

だって。


田中さんはこっちを見てるかどうかもわかんない。

わんこはなぜかじっとこっちを見てる。「くうーん」って。

もう少しでこっちに走ってきそうなくらいの勢いで首のひもを引っ張ってる。


ママはぼくにも「あいさつしなさい!」ってうるさい。

今日も、ちっちゃなこえで、

「ほら、あいさつは?!」ってぼくをこづいた。


でも、今はそれどころじゃあない。


おなかがぐるぐるしてそんな気分じゃないんだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る