第4話 ママ、あのね、これはね・・・
保健室の綾先生はいつもニコニコしてる。
棚の奥から新しいパンツとズボンを取り出して、
「これに着替えてね!」
って言ってから、ぼくの濡れた服をスーパーの袋に大事そうにしまった。
「これはカイくんのおみやげね。おうちにもって帰ってね。」
やっぱりニコニコしながらぼくに話しかける。
変なの。
『おみやげ』なんて変だよね。
でも、なんて言っていいかわかんない。
わかんないからだまってると、勢いよくドアがガラガラって開いて、京子先生が戻ってきた。
「さあ、お教室に戻りましょうか。大丈夫?」
大丈夫って?何が?
限界までおしっこ我慢して気持ち悪くなったし、濡れたパンツは気持ち悪かった。
やっと着替えたズボンも短すぎるし、変な模様。
何を言ったらいいの?
黙ってたら、入り口からママがそっと入ってきた。京子先生が電話したみたいだ。
ママを見たら、なんだか我慢してた色々な気持ちがおなかの中でぐるぐるーってしてきて、ママをつきとばしちゃった。綾子先生から渡された『おみやげ』をぐるぐる振り回してママにぶつけた。
心配そうな大人たちがぼくを見下ろしてちょっと困った顔をしてる。
京子先生がはっと気付いたように、
「今日はあと帰りの会だけだから、お荷物もってお母さんと一緒に帰りましょうか?」
そう言うと、教室から素早くランドセルを持ってきて、ママと帰ることになった。
「またパート先に学校から電話かかってきたよ!」
そう言って怒るんだろうな、ママ。ちょっとゆううつ。
ママと早くおうちには帰りたいけどね。
なんかぐるぐるな気持ちでママととぼとぼ歩いた。
でもママは何も言わない。ただちょっと心配そうな顔でぼくをみるだけ。
ぼくのおなかのぐるぐるはまだ止まらない。仕方がないから、歩いてる途中ずっとママの後ろからどーん!ってママを突き飛ばした。一回、二回、三回・・・ママはやっぱり何も言わない。
とうとううちの近くの急な坂道が見えてきた。
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