第2話 先生、あのね

キンコーン。

曲がり角の向こうに小学校の門がやっと見えてきた時に鐘が鳴った。焦って大またで歩こうとしたけどうまく先に進まない。だってランドセルが重すぎるんだよ。


今日は月曜日。体操服に上履きに給食当番の袋。どれかどこかに落としちゃいそうになりながら、門に向かって走る上級生を追いかけた。僕の後ろにいるのは1年生だけ。

ふう。なんとか二年生の教室に滑り込んだ。


ガラガラ〜!担任の京子先生が勢いよく教室に入ってきた。


はいっ。おはようございます!

いつもの一日がいつもの通り始まった。


一時間目は苦手な算数。

やだなやだな。そう思っていたらやっぱりわからないところで京子先生にあてられちゃった。

あのね。あのね。わかんない。先生の言ってること全然わかんない。でもそんなこと正直に言ったら怒られるよね。


もじもじしてたら、となりのかすみちゃんが助け舟を出してくれた。

僕の顔を見上げてちっちゃな声で

「よん!答えはよん!だよ!」

助かった。

でもかすみちゃんの声も京子先生にもちろん聞こえてた。


休み時間に、

「カイくん、ちょっと‥ねえ、カイくん、ノート見せてくれる?」

京子先生は、僕のかおと、へなへなな解読不能のノートを見てクスッと笑った後、ちょっと真剣な顔をして聞いてきた。

「ねえカイくん、先生の説明、わかったかなあ?わからなかったら教えてね。」

・・・僕はやたらもじもじした。


先生あのね・・・。

「僕本当は先生の言ってることぜんぜんわかんない。」

本当はこう言いたかったんだけど、口からは何も出てこなかった。かわりにもっともじもじした。


先生、あのね・・・

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