学校一の美少女とファーストキス

「あ……大くん」


 家に帰った瞬間に俺は雪音を抱き締めた。

 いきなりのことだからか、雪音は耳まで一瞬にして赤く染まる。

 玄関で靴も脱がずに抱き締め、恥ずかしがっている雪音の顔を見て楽しむ。


「二人きりになったら抱き締めるって言ったでしょ」


 耳元で呟くと、雪音は「あうー……」と声を発した。

 俺を見ることが出来ていない雪音は可愛く、もしかしたら女の子の恥ずかしがっている姿を見るのが好きなのかもしれない。

 ガッツリと迫ることはしないが、せっかく付き合っているのだから楽しまないと損だ。

 たとえ期限があったとしても……。


「いつまでもここにいるわけにはいかないからリビングに行こうか」

「はい」


 靴を脱いでリビングまで移動する。

 未だに顔を真っ赤にしている雪音を再び抱き締め、優しく床に押し倒す。

 足を閉じられないように太ももの間に自身の膝を入れ、雪音の華奢なのに柔らかな体を楽しむ。

 一切抵抗しないが、恥ずかしさから雪音は「あうー……」と言って俺の方を向くことが出来ずにいる。


「どうしたの? イチャイチャしていいって言ったは雪音でしょ?」

「あう……そ、そうなんですけど、ここまでとは思っていませんでした。なんか抱きつき方がエッチです」


 雪音の体は熱くなっており、服越しに彼女の体温が伝わってくる。

 昨日は完全に色気より食い気だったが、こうやってイチャイチャするのもいいかもしれない。


「しばらくこのままでいよう」

「なっ……、大くんは私を恥ずか死させる気ですか?」


 イチャイチャして死ぬ女子高生はいないだろう。

 どんなに恥ずかしくても子供が出来るまで付き合うと言った以上、雪音はイチャイチャしなければならない。


「恥ずか死したら冷凍保存しといてあげる」

「今日は大くん意地悪です」


 不満そうに「むう……」と頬を膨らませるが、顔が真っ赤なので可愛すぎる。


「嫌だったか?」


 離れようとしたが、雪音が俺の背中に腕を回してきたので抱きついたまま。


「私は大くんの、彼女です。大くんが望むなら、このままで……います」


 つまりはイチャイチャしていたいと思っているということでいいだろうか?

 罰ゲームで告白してきたのにイチャイチャしたがるのは本当に不思議だ。

 普通はこんな風に抱きついたりしない。

 今は罰ゲームかどうかなんて考えることはせず、俺は雪音をずっと抱き締めることにした。


☆ ☆ ☆


「あの……もう一時間はこのままでは?」


 家に帰ってきてから俺は雪音のことを一秒も離していない。

 長時間抱き締められていたら慣れると思ったが、未だに雪音の顔は赤く染まったままだ。


「そうだな。一時間ではなくて二時間だけど」

「え?」


 俺の言葉を聞いて驚いたような顔をする雪音であるが、二時間たったのは事実。

 抱き締められているのが楽しいということだろうか?

 人は楽しく思うと時間がたつのは早く感じるため、一時間と勘違いした雪音は少なくとも嫌と思っていないということだ。

 嫌なら三十分もたっていないだろう。

 むしろ普通は抵抗する。


「今日は一秒たりとも離してあげないから」

「あうー……本当に意地悪です」

「嫌なら抵抗すればいい」


 流石に抵抗されれば離れるし、無理矢理イチャイチャしたいとは思わない。


「抵抗出来ないのわかってくせに……バカ」


 確かに嫌ならもう抵抗しているはずだ。

 一切の抵抗を見せないからずっと抱き締めていられた。


「毒吐く口はここか?」


 人差し指を雪音の唇に当てる。

 物凄く柔らかく、これが女の子の唇なのか? と思う。

 プニプニと指で唇を押してみると、弾力で押し返してくる。

 どんなにしても恥ずかしがってはいても抵抗はしない。


「大く……んん……」


 指で唇を抑えられているからか、雪音は上手く喋ることが出来ていない。

 ずっと触っていたい気分になったので、離すことが出来ずにいる。

 そして俺の視線は先ほどから雪音の唇に向けたままだ。

 指でもこの柔らかさと温かさを感じるのだし、敏感な唇で感じたらどうななるのだろうか?

 キスしてみたい……そんな気持ちにかられるが、しても大丈夫かどうか心配になる。

 やろうと思えば出来るかもしれない。

 でも、勢いでキスしないでくださいって怒られる可能性はある。

 だから出来ずにいるのだ。


「もう……勘違いしそうになるじゃないですか……」


 指をどかした雪音は小声で何か呟き、自身の唇で俺の唇に当てた。

 一瞬何が起きたかわからなかったが、俺は雪音にキスされているのだ。

 思っていた通り柔らかくて熱く、病みつきになってもおかしくない。


「私の、ファーストキス……ですから」


 すぐに離れてしまったが、未だに唇にはキスの感覚が残っている。

 それは雪音も同じようで、顔を真っ赤にしながら自分の唇を指で触っていた。

 余韻を楽しんでいるかのようだ。

 あり得ないくらい可愛く、今度は俺からキスしてしまうのだった。

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