学校一の美少女とショッピング

「眠いのに……」


 学校が終わり、俺は雪音に連れられて駅前まで来ていた。

 眠くて早く家に帰りたかったが、上目遣いで「デートしたいです」と言われて断ることが出来なかったのだ。

 女上目遣いは本当に卑怯だ。

 学校一美少女と言われている雪音はどこにいても目立ち、まるで有名人が来ているかのように男女の視線を独り占めしている。

 日本では珍しい銀髪美少女がいたら皆見てしまうだろう。


「今日はずっと眠いと言ってますね。本当にグータラですね」


 呆れたように雪音は「はあー……」とため息をつく。


「眠いもの眠いからしょうがない。眠れるカラオケか漫喫にしないか?」

「寝るの前提でデートとか彼氏失格ですよ?」


 好きだったら彼女のために頑張るところだが、生憎惚れているわけでないからダラけさせてもらう。

 面倒だから。


「一緒に漫喫で寝るか?」

「なっ……何言ってるんですか? エッチ変態」


 耳まで真っ赤にしている雪音に怒られた。

 俺は純粋に寝たいだけなのだが、雪音は違うことを考えているのだろう。

 こういった話に恥ずかしがって反応する雪音は可愛いが、余計なこと言わないでおく。


「ところでどこ行くの?」

「え? 私の反応はスルーですか?」

「早く帰って寝たいから」

「家で私と一緒に寝たいということですか?」


 意外と雪音の脳はピンク色な気がする。

 女子高生だって色々と考えると聞いたことがあるし不思議ではない。


「で、でも、大くんが私と一緒に寝たいと言うのであれば、彼女ですし、いいですよ?」


 さっきまで怒っていたのにも関わらず、今度は唐突にデレてきた。

 本当に可愛らしい。


「ずっとデレてればいいのに…」

「何ですか? 男ならハッキリと言ってください」


 良く小声になる雪音に言われたくないと発言してもいいだろうか?


「何でもない。早く行って帰るぞ」

「もう……せっかくのデートなんですからもっと楽しんでくれてもいいのに……バカ」


☆ ☆ ☆


「うわー……オタクの俺には縁のない場所だな」


 雪音に連れて来られた場所は、駅前にあるショッピングモールのアクセサリーが売っている店だった。

 指輪やネックレスなど、お洒落さんが身につけそうな物がいっぱいある。


「くっ……こんなリア充が来るとこはダメージがでかいぜ」

「何バカなことを言ってるんですか? それに大くんは私と付き合ってるんですからリア充じゃないですか。付き合った実感がわかないなら、イチャイチャしても、いいんですよ?」


 ケナしながらデレるとは思っていなかった。

 普段が毒舌である分、急にデレられると破壊力が高い。

 しかも上目遣いで頬を赤らめながら言われたら破壊力は倍増だ。


「外でイチャついてもいいのか?」

「彼氏である大くんが、望むなら、彼女である私は答えないと、です」


 この可愛い生き物は何んだろうか?

 本当にずっとデレていればいいのにと思うが、そんなこと言ったら罰ゲームで付き合ってるのに何言ってるんですかと言い返されてしまいそうだ。

 ただ、デレられると、罰ゲームであることを忘れてしまいそうになる。

 それくらいデレる時は演技と思えないのだ。


「じゃあおっぱいを……いだだだああー」

「大くんは学習能力がないのですか? いくら子供を作るまでといってももう少し待ってください。それに初めてはもっとムードがいい時の方が……」


 つねりながら白い目を向けて小声で言うのを止めてほしい。

 下ネタをぶっこんだ俺が悪いのはわかっているが、手の甲は痛くて涙目になってしまいそうだ。

 もう人前で下ネタを言うのは止めておこうと心の中で誓った。


「手はずっと繋いでいるし、イチャつくのは抱きついたりか?」


 頬を赤くしながら雪音は「はい……」と頷く。

 流石にアクセサリーショップで抱きつくわけにはいかず、雪音の耳元で「二人きりになったら」と呟いた。

 昨日膝枕やあーんってして食べさせてきて自分から甘い雰囲気を作ったのに相手からこられるのは苦手なようで、雪音は耳まで真っ赤にして首を縦に降る。

 マジで罰ゲームなのか? と叫びたい気分だ。

 罰ゲームにしてはあまりにも雪音は俺に懐を許し過ぎている。

 エッチなことはまだ無理みたいだが、恐らくキスくらいはすぐに出来てしまいそうだ。

 こちらからしないと向こうから迫ってくるんじゃないかと思いほどに。


「それで何買うんだ?」

「あ、はい。指輪ですよ」

「指輪? 何で?」

「私たちは付き合ってます。彼氏である大くんは、彼女である私を独占する権利があり、ます。だから指輪をつけて、私は大くんの彼女だというのを、示したい、です」


 もう学校の誰もが知っていると思うのは俺だけだろうか?

 恥ずかしがるのなら言わなきゃいいのにと言ってみたい気もするが、可愛いので見ていたい。


「後、逆もなので、ペアリングにしたい、です」


 つまりは俺は雪音に独占されるということだ。

 別に女の子とあんまり話さないから独占しても意味ないと思うが。


「ペアリングか」

「はい。ダメ、ですか?」

「ダメじゃない。ただ、俺はバイトとかしてないから安いのになる」


 バイトなんてしていたら家事をするう余裕がなくなってしいまい、家の中が汚れるだろう。

 そもそも家にはあまり物はないが。


「大丈夫です。私も半分だしますし、大くんが選んだ、というのが大事なので……」


 恥ずかしながら小声になる雪音は見ていて飽きない。

 言うと怒るだろうから絶対言うことはないので、心の中で楽しんでおく。


「じゃあ選んで買うか」

「はい」


 あまり高くなく良さそうな指輪を二人で選んで買った。

 指輪に名前を彫ってくれるサービスがあったのでしてもらい、店を出る。


「えへへ。ペアリング……大くんとお揃い」


 クールな雪音があり得ないほど口元が緩んでおり、かなり嬉しいようだ。

 すぐに左手の薬指につけ、ずっと指輪を見ている。

 喜んでくれたなら良かったと思い、俺も左手の薬指に指輪をはめた。

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