第13話 村の宴と電気ショック?

 日も落ちて、松明の炎が周囲を明るく照らす中、村では盛大な宴が開かれていた。


 村人は祭壇を囲むように円となり、飲めや歌えの大騒ぎ。


 そんな宴の中。ミサキは祭壇の近くにあったテーブルのそばに用意された、ミサキ専用の大きな椅子に座りながら、気まずそうに果物をかじっていた。


「よぉーっ! ミサキーっ! 楽しんでくれてるかぁー?」

「あーっ! ちょっと!! 抱きついてこないでよ! この酔っ払いめっ!!」

「わはははっ! わりぃわりぃ、つい嬉しくてな」


 筋肉質なおじさんこと、ジョージさんは私から離れると、お酒で顔を赤らめて、ニコニコしながら頭を掻いた。


「まったくっ……」


「そう怒るなよー! おりゃ嬉しいんだよ! もう本当にこの村はダメかもしれねえって思ってたからな……。ぐすっ。全部ミサキのおかげだよ。ありがとなああ!! みさきぃぃ──っ!!」


「ぎゃあああ──ッ!! だから抱きついてくるなぁっ!! この変態があああッ!!」


 ミサキはジョージを無理矢理引き剥がすと、すかさず雷魔法で雷撃を放った。


「あびゃびゃびゃっ!!」

「ハアハア……。ふんっ!」

「うちの主人がご迷惑をお掛けして申し訳ありません……」

「えっ?」


 ミサキが振り返ると、そこには20代前半ぐらいの金髪ロングの綺麗な女性が、申し訳なさそうに何度も何度も頭を下げている姿があった。


「えっ!? あっ、そんなもう気にしないでください!」

「ですが……」

「じ、じゃあこうしましょう! 私もやり返しちゃったので、おあいこ! おあいこってことでっ!! ね?」


 女性はキョトンとした顔で焦ったミサキを見つめたかとおもうと、突然手を口元に当てて微笑みながら。


「ふふふっ。あんなに凄い力を持っているのに、私達を見下したりしないんですね。ミサキさん。村を救ってくださって、本当にありがとうございました」


「もう気にしないで? 気が向いただけだからさ」

「それでもです。……あ、そうだ。もしよければ今晩はうちに泊まって行きませんか?」

「えっ! いいの?」

「もちろんです! ぜひゆっくりしていって下さい」

「わあーっ! 泊まるところ決まってなかったから助かるよ! えーと……」

「あ、失礼しました。私はサーシャといいます。ミサキさんよろしくお願いします」

「サーシャさん! こちらこそよろしくね? できればもっと気軽に話してくれたら嬉しいなあー」

「ふふふっ。わかりました。じゃあうちの旦那を家に運ぶのに人を呼んでくるので、ちょっとだけ待っててもらっていい?」

「あっ、いいよいいよ。私が運んじゃうから。 ほいっ!」


 ミサキは風魔法を使って、後ろで気絶しているジョージを宙に浮かせると、ニッコリと無邪気な笑顔を浮かべながら振り返った。


「それで? どっちに行けばいいの?」


 ◆◇◆◇


 中央の広場から15分ぐらいでジョージ夫妻の家に着いた。二階建ての大きな家。私の住んでたアパートと同じぐらいの敷地がありそうだ。


「狭い家だけど、ゆっくりしていってね?」

「えっ! 全然狭くないよ? すごく広々としたいい家じゃんっ!!」

「ふふふ。ありがとう。だけどきっとミサキさんの家は、ここよりもっと広々としてるでしょ?」


 ──嫌味? いや。そんな感じじゃなさそうだなあー。


「えーと。私、家なんて持ってないよ?」

「ええっ!? そうなのっ!? ごめんなさいっ! 私てっきり……」

「あー全然気にしないで大丈夫だよ? でもホントにいい家だね。私も将来的には、自分の家がほしいなあー」

「ミサキさんほどの実力があれば、家なんてすぐ買えますよっ!」

「そ、そうかな?」

「そうですよっ! そうだっ! この村に住まれて見てはどうですか?」


 ミサキはグイグイ迫ってくるサーシャに、若干困惑しつつ、気まずさから薄ら笑いを浮かべた。


「あはは……。あっ、ジョージさんはどこまで運べばいい?」

「そうですねー。寝室のベットまで運んでもらってもいいですか?」

「ほーい。──よしっ。これで大丈夫?」

「ええ。助かりました。そうだ、お風呂も良ければ入っていってくださいね? 私はちょっと用事があるので、外へ出てきます」

「ありがとー! じゃあお言葉に甘えてお風呂に入らせてもらうね。 サーシャさんも夜遅いし気をつけてね?」

「ふふふっ。心配してくれてありがとうございます」


 外へ出ていくサーシャさんの背中を見送った後、お風呂にゆっくり浸かって1日の疲れをとってから居間に戻ってくると、出かけてたサーシャさんも家に戻ってきてたので寝室まで案内してもらった。


 特にすることもなかったので、ベットに入って今日は早めに寝ることにした。


 異世界生活2日目も終わりだ。

 私頑張って生きてます!



 ◆◇◆◇



 ──コンコン。


 次の日の朝。扉を叩く音が聞こえて目を覚ました。


「はぁーい……」

「ミサキさーん。朝食の準備ができましたがどうされますか?」

「ありがとー。すぐいくね」


 ミサキは眠気でしょんぼりした目を擦りながら、窓から外を眺めた。日が登ったばかりなのか、外はまだ薄暗かった。


 どうやらどの世界でも農家の朝は早いらしい。わたしには向かない仕事だね。もっとゆっくり寝たいもん。



 野菜たっぷりの美味しい食事をいただいて、サーシャさんが用意してくれたホットミルクを飲んでいると、ジョージさんが私を見つめながら気まずそうに口を開いた。


「その、なんだ……。昨日は悪かったな」

「いいよー? 泣いて抱きついてきて、すごくうざかったけど」

「マジか。全然覚えてねえぞ……。というか昨日の宴の記憶がほとんどねえ」

「あー。ちょっと威力が強すぎたのかな?」

「威力が強すぎたってなんのことだ?」

「いやー。あまりにうざかったから雷でビリビリーってね?」

「へ?」

「ふふふっ。昨日は大変だったんですよ? あびゃびゃびゃって変な声をあげて倒れちゃったから、ミサキさんに家まで運んでもらったんですから。今度からお酒は程々にしてくださいね?」

「いやいやっ!! それミサキの雷のせいじゃねえのかっ!?」

「ふっ」


 ミサキはジョージの言葉を鼻で笑うと、ホットミルクを片手にキメ顔でジョージを見つめながら。


「セクハラには厳罰あるのみ。私に慈悲はない。記憶を全て消されなかっただけでも、ありがたく思ってよね!」


「はあああっ!? お前発想がぶっ飛びすぎてて、怖すぎるだろっ!!」

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