第4話 はれあめダンス
ケンタ達が森から出ると、空は晴れていました。
でも雨も降っていました。
「なにこれすごい! 変だけど爽やか!」
大興奮のケンタは、くるくる回り大はしゃぎ。
水たまりに飛び込み踊ります。
カエルになった気分で飛び回り、水しぶきをあげます。
「もっとやってくださいな! ケンタさん!」
楽しくなったデンデン姫は、その気持ちを歌にしました。
「雨が降ったら出かけましょう。長靴履いて歩きましょう。耳をすませば音楽会、森で走れば大冒険」
じいやもつられて大合唱。
「着いた所はあじさい畑。梅雨の日だけの舞踏会。貴婦人達が自慢するのは、雨粒のアクセサリー」
目を開ければ太陽が雲の間から顔をのぞかせています。
サラサラ細い雨と優しい白い雲は、今この瞬間しかないと、ケンタは思いました。
こんな美しい世界に連れてきてくれたデンデン姫が、かわいらしく見えました。
はじける心が、ケンタを笑わせます。
「デンデン姫、ありがとう!」
二匹と別れたあと、家でケンタはお風呂に入りました。
湯船につかりながらケンタはウトウトしてしまいました。
そして、夢を見ました。
自分が雨になる夢です。
雨粒のケンタは、どこにおちようか雲の上で迷っていました。
そして、一番好きな場所にしようと思いつきました。
「せいや!」
スカイダイビングのように飛び降りれば、町全体がはっきり見られました。
灰色の道路では、色とりどりの傘が開いています。
公園には水たまりの世界地図が広がっています。
風を受けるケンタが目指すのは、青いあじさい。そこには、デンデン姫がゆっくり歩いていました。
「デンデ、ゴボバッ!?」
ケンタの口に、我先にとお湯が流れ込んで
「ゲボッ、ゲボッ。あーーびっくりした」
お風呂から上がると、お母さんがいました。
「ケンタ。外で遊ぶのはいいけど、泥まみれにならないでよ。レインコートを洗うのは大変なんだから」
「はーーい」
ケンタはそう答えましたが、やめるつもりはありません。
「また着るから、早く乾けよ」
干されたレインコートに、こっそり話しかけました。
そよかぜが吹いて、レインコートを揺らします。
その風は、水の匂いがしました。
せっかちケンタとデンデン姫 泉 日和子 @tanoshiihito
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます