第2話 雨の日の公園
「行きますわよケンタさん。私を落とさないでくださいね」
「はいはい。カラが割れたら大変だもんな」
ルンルン気分のデンデン姫が乗っているのは、ケンタのサッカーボールです。
最初ケンタは
「絶対にイヤだ! ヌメヌメするじゃん!」
と反論しましたが、
「それじゃあ、ケンタさんの肩か頭の上におじゃましますわ」
サラッと恐ろしいことを言われたので、しぶしぶボールを使うことになりました。
町はたまに車が通るだけで、人の姿はありません。
さみしい、やっぱり晴れている方がいいとケンタは後悔しました。
公園についた一人と一匹は、屋根のあるベンチで休むことにしました。
人がいない公園はちっとも楽しくありません。
「ほら、雨なんてつまらないだろ。静かだし」
「静かなんかじゃありませんわ。いろんな音がするでしょう。耳を澄ましてみなさいな」
(なんだよ。カタツムリが気取ったりして)
ふてくされたケンタはこのまま寝てしまおうと目を閉じました。
(あーー、すごい雨の音がする。ただの雨なのに)
まぶたの裏にまで水の線が見えるようです。
(うるさい……とはちょっと違うな。すごいゆったりしている。こんなの初めてだ。あっ車が通った)
踏まれた水たまりが大きくはじけました。
(思ったよりも大きい音だな)
フニャーーオ!! バサバサ!
猫の鳴き声がしました。同時にはっぱが取れたようです。
(木の上で寝ていて、雨粒にびっくりしたんだな。猫は濡れるのイヤだしな。この軽いのは……コンクリートに落ちてくるやつか)
「よく聞こえるでしょ? 雨の音」
「うん」
ケンタの返事はとても穏やかでした。
イライラが消え去ったのです。
ちょっとくすぐったい気持ちでした。嫌いなクラスメイトのいいところを知ったみたいです。
「ゴメン。イライラして」
「気にしていませんわ。気持ちいいでしょう?」
「うん。寒いけど、頭がふわふわする」
「さようでございますか。それは素晴らしいことです」
「そうだね……。ん?」
聞こえたのはおじいさんの声です。
「初めまして、ケンタ様」
隣にいたのはアマガエルでした。
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