第179話 お祝い

週末の定時後、顔合わせを兼ねたお祝いに。


以前、別荘に行ったメンバーと、あゆみが顔合わせをしたんだけど、みんなは口々にお祝いの言葉を並べ、美香と二人で照れまくっていた。


酔いが回ってくると同時に、美香はあゆみとけいこ、そしてかおりさんの4人で話始めていたんだけど、勇樹が仕事の話を切り出し、けいこは「いいなぁ」と、羨ましがるような声を上げた。


それを聞いた美香が「会社、無事だったんでしょ?」と聞くと、けいこは不貞腐れたように口を尖らせ話し始めた。


「白百合の件で仕事なくなったじゃん? あの時にリストラしたのよ。 そこから『あんたのせいであの人が辞めた』とか『あんたのせいでこの人が切られた』とか、毎日お局から嫌味ったらしく言われて、いまだに言われるんだよ? ホント、辞めてやろうかと思うわ」


「うちの会社、まだ募集かけてるよ? ね? 社長」


「ああ。 もう一人くらい欲しいところだな」


「えー… でも遠いしさぁ…」


けいこが呟くように言うと、勇樹が「俺も遠いから引っ越したけど、家賃、半額になったぞ? 引っ越せば?」と提案していた。


けいこは口を尖らせたまま「えー… 考えとく~」と言っていたんだけど、あゆみが「あ! うちでルームシェアする? 一人暮らしだし良くね?」と声を上げていた。


そのままあゆみとけいこは話していたんだけど、大介はあゆみを見て「めっちゃ可愛くね?」と小声で聞いてきた。


あゆみのことをそんな目で見たこともないし、意識したこともない。


美香とは正反対の、ギャルっぽい見た目なんだけど、大介は「俺、ギャル好きなんだよねぇ」と、呟くように言っていた。


「えー… つーか、従兄がユウゴだぞ?」


「え? マジで? お兄さんって呼んでいい系?」


「いやだ。 兄貴じゃねぇし」


そう言いながらも笑い合い、楽しい時間を過ごしていた。



帰宅後、美香がシャワーを浴びている間、テレビを見ながら飲んでいると、うちで独占配信されている漫画の話が持ち上げられていた。


しばらくテレビを眺めていると、美香が「空いたよ~」と声をかけてくる。


シャワーを浴びた後、美香の隣に座ると、美香がウーロン茶を飲みながら「電子コミックの売り上げ、絶好調だもんねぇ」と嬉しそうに声を上げた後、仕事の話を切り出してきた。


「光輝社長がサンライズの案件、優君と大ちゃんのどっちかが出来るようにしといてくれって。 かおりさんの案件は大ちゃんのほうが良いと思うんだよね。 あの二人、飲み仲間だから」


「そっか。 わかった」


そう言いながらもグラスの酒を飲み、美香に「お祝いなんだし、ちょっと飲んでみない?」と、グラスを手渡しながら切り出した。


美香は顔をしかめ「すぐブラックアウトしちゃうよ?」と言っていたんだけど、俺の押しに負けたように、ほんの少しだけ飲んでいた。


美香は時間が経つと共に、顔が赤くなり、目がトローンとし始める。


『やべぇ… 可愛すぎる… たまんねぇ…』


胸の奥を締め付けられつつも、「もう寝よう」と言うと、美香は「うん。 抱っこして」と甘えた声で言ってきた。


再度、胸の奥を締め付けられつつも、美香を横向きに抱きかかえると、美香は俺の首に腕を回し、嬉しそうに笑いかけてくる。


そのまま美香をベッドに寝かせたんだけど、美香は腕を離そうとはしなかった。


「美香、電気消して来ないと…」


「このままが良い。 嫌?」


「…嫌じゃない」


お互いを求め合う様に唇に貪りつき、甘えまくる美香に身を委ね続けていた。

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