第119話 裏情報

美香についてきて別荘に着いた途端、アニメOP制作を手伝わされていると、リビングのドアが開き、「おっす~」と言いながらカオリさんが中に入ってきた。


カオリさんの顔を見た途端、先日、電話で怒鳴られたことを思い出し、慌てて立ち上がった後に駆け寄り、カオリさんの前で一礼すると、カオリさんは「よぉ。 成金ボンボン」と…


『な… 成金…』と思いながらも、「先日は大変失礼いたしました」と言うと、カオリさんは椅子に座り「仕事じゃないんだから、んな堅苦しいこと言うなって! ビール!」と大声を上げ、ケイスケがササっと缶ビールを持って来た。


カオリさんは「おう。 ご苦労。 新人?」と言い、ヒデさんが「美香の会社の人。 ついてきたらしいよ」と説明。


カオリさんは「へぇ~。 ま、腐ってもプロなんだし、役に立つからいっか。 それよりもさ…」と言い、ヒデさんに顔を近づけた。


元居た場所に戻ろうとすると、カオリさんに呼び止められ、監督とヒデさん、たまたまそこにいたケイスケの4人はカオリさんに近づくと、カオリさんとヒデさんは小声で話し始めた。


「うちのから聞いたんだけど、ケイコと勇樹の会社、白百合に仕事奪われてるって」


「白百合って山根のホワイトリリィ?」


「そそ。 白鳳が圧力かけて、無理やり白百合に仕事させてるらしい」


「通りで… うちも急に契約解除されたりしてるわけだ」


「大介のところも時間の問題だろうね。 あんたのとこも危ないわよ?」


カオリさんは急に俺を見ながら言ってきた。


「目的って何なんですか?」と聞くと、カオリさんはさらに小声で話してきた。


「このメンバーを白百合に集めたいのよ。 このメンバーは自分が思ってる以上に知名度もあるし、山根との伝手もある。 しかも、白鳳自体がネットで炎上しまくってるし、株価も落ちてるじゃない? 安月給で雇って、全てを鎮静化できるとしたら、使わない手はないでしょ?」


「なるほど… それって違法ですよね?」


「そんなの関係ないわよ。 今は金で揉み消すことができるからね。 けど、それが出来なくなったら、潰れるわよ。 白鳳」


思わぬところで裏情報を仕入れてしまったけど、カオリさんは「トップシークレットだからね」と念を押すように言ってきた。


原作大ファンなケイスケは「あのアニメ、白鳳に汚されてるんすね… 俺めっちゃ好きなのに…」と呟くように言うと、カオリさんは「そう思ってるのは一人じゃないわよ。 炎上してるってことは、そういうことでしょ?」と言い、にっこりと笑いかけた。


その後も飲みながら話をしていたんだけど、カオリさんとヒデさんはウィスキーをロックで飲み始めた。


俺とケイスケ、それに監督も付き合っていたんだけど、ケイスケと監督はあっという間にダウンしてしまい、隣の部屋に移動していた。


『強ぇ… かなりやばいかも…』


そう思いながら飲んでいると、ユウゴが「カオリさんに会いたいって思ってたんすよぉ」と言いながら、俺たちの輪に乱入してきた。


改めて紹介すると、カオリさんは呂律のまわっていない感じで「んぁあ? 副社長? 美香の前に担当してたやつ? あんたさぁ、あたしの事舐めてんの? なんなのあの動画」と説教開始。


ユウゴはひたすら謝っていたんだけど、カオリさんは説教をしながら酔いつぶれていた。


酔いつぶれたカオリさんを見るなり、ヒデさんが「美香、出番だぞ」と声をかけ、美香は当たり前のようにカオリさんのもとへ。


美香は慣れた感じで「カオリさん、起きてください。 お布団行きますよ」と優しい口調で言いながら、軽くカオリさんの体を叩き、カオリさんは唸り声をあげるばかり。


『こんな風に言われたら… まじでたまんねぇな…』


そんな風に思いながら飲み続けていた。


美香はカオリさんの腕を担いで寝室に行こうとしていたんだけど、ヒデさんや他のメンバーは見向きもしないし、助けようともしない。


「大丈夫か?」と言いながら美香の助けようとすると、カオリさんが「触んじゃねぇ!!」と怒鳴りつけてきた。


「えぇぇぇぇ…」


思わず情けない声を出すと、美香はクスッと笑った後「こうなるからみんな手出しできないんですよ」と微笑んでくる。


「美香ちゅわぁぁん。 愛してるぅ~」


「はいはい。 私も愛してますからお布団行きますよ~」


美香はカオリさんを抱え、ケイスケと監督が眠っている寝室に入っていた。


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