第120話 穏やかな朝

カオリさんが酔いつぶれた後、ヒデさんとユウゴの3人で飲んでいたんだけど、作業をしていたメンバーは、時間が経つにつれ、メンバーは吸い込まれるように隣の部屋へ。


一人減り、二人減り、三人減り… 


気が付くと俺とユウゴ、そして美香の3人だけが残されていた。


ユウゴが「俺らもあそこで寝るのかな?」と聞いてきたけど、説明もされてなければ、自己紹介すらされていない。


建物内の構造は、何となく理解できていたんだけど、詳しい説明をされていないせいで、どうしていいのかわからなかった。


「どうしたらいいんだろうな…」と呟くように言うと、眠そうな顔をした美香が「寝ないんですか?」と聞いてきた。


「何の説明もされてないんだけど…」と言うと、美香はハッとした表情の後「すいません。 すっかり没頭してました」と言い、寝室に案内してくれた。


寝室に入ると、そこには所狭しと布団が敷き詰められていて、先に寝ていたメンバーは、縦横無尽に横になっている。


唯一、普通に寝ているのは、部屋の隅に布団を移動させて寝ているヒデさんだけ。


カオリさんに至っては、ケイスケの上に足を乗せ、女の子の腕枕で寝ている始末。



思わず「…何が起きた?」と言うと、美香は「事件現場みたいでしょ? これが普通なんです」と言い、布団の上を足で探るように擦り、「この辺空いてますから、ご自由にどうぞ」と言ってきた。


ユウゴはすぐ、布団に潜り込み、美香は入り口に一番近い場所の布団に潜り込んでいた。


美香の隣の布団に潜り込むと、すぐに睡魔に襲われ、あっという間に眠っていた。



翌朝。


誰かのいびきに目が覚め、ゆっくりと目を開けると美香の姿がなかった。


ゆっくりと起き上がり、周囲を見回しても美香がいない。


リビングに行くと、美香はコーヒーを飲みながら資料を眺め、俺に気が付くなり「おはようございます。 コーヒー飲みます?」と聞いてきた。


「ああ」と返事をした後、洗面所に行き顔を洗っていると、美香がタオルを差し出してきた。


「サンキュ」と言いながらタオルを受け取ると、美香はすぐにリビングに行き、ソファに座っていた。


美香の隣に座った後、コーヒーを飲みながら「毎週ここに?」と聞くと、美香は「そうです。 前にOPの件で怒らせちゃったから言いにくくて…」と苦笑いを浮かべていた。


「あーそう言うことか」


鳥のさえずり耳を傾け、美香と並んでコーヒーを飲む。


言葉を交わすことはなく、ただただ黙って窓の外に映る景色を眺め、鳥のさえずりに耳を傾けていた。


昨晩まで、慌ただしい声が響き渡っていたのが嘘のように、ただただ黙って、穏やかな時間を過ごしていた。


「なんかいいな。 こういうの」


「でしょ? 最初は戸惑ったけど、すごく楽しいんですよ」


「だろうな。 すげぇわかる。 そりゃ喧嘩吹っ掛けてまでやりたがる訳だよな」


「あ、あの… 私の処分って懲戒ですか?」


「ん? 遊びなのになんで処分しなきゃいけねぇの? おかしくね?」


そう言いながら美香の顔を見ると、美香はキョトーンとした表情を浮かべていた。


「昔の仲間と遊んでるだけだろ? 仕事に差し支えてたり、問題行動してる訳じゃないし、処分の対象にはならないよ。 ま、一時期差し支えてたけどな。 今は問題ないし、それくらい目を瞑るよ」


そう言い切ると、美香は「良かったぁ…」と言い、ホッとしたようにソファにもたれかかり、鳥のさえずりを聞いていた。




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