第8話 鳥肌

翌日から、部活に行くようになったんだけど、マネージャーが美香と、うちのクラスの山越明日香の2人。


山越はスコアブックばかりを書き、美香は洗濯や雑用ばかりで、ほとんど体育館には居ない状態だった。


『美香ばっかり動いてんじゃん… ちょっとは変わってやれよ…』


そう思っても、声に出すことが出来ず、ユウゴと3ポイントシュートを打って遊んでいた。


しばらく遊んでいると、美香の「終わったよ」と言う声が聞こえ、美香が山越と並んで話し始めている。


『いいとこ見せたい』


そう思いながら3ポイントを打つと、ボールはゴールリングに当たってしまい、シュートが外れてしまった。


すかさず、ユウゴの「大地下手すぎ~」と言う声が聞こえ、「うっせー!」と答え、ドリブルをしながら歩いていた。


『もう一回!!』


そう思いながらシュートを打つと、シュートは綺麗に決まった。


『よっしゃ!』と思いながらふと見ると、美香の姿はなく、軽い虚しさを感じていた。



数日後、選択授業を終えた後、個人ロッカーから教科書を出そうとしたときに、ふとあることに気が付いた。


『教科書忘れたことにすれば、もしかしたら借りれるかもしれなくね? ユウゴに言えば、隣の美香に借りろって言うだろうし、これがきっかけで話せるようになるんじゃね?』


そう思いながらロッカーに鍵をかけ、ユウゴの教室へ向かおうとすると、ケイスケと美香が話しながら並んで歩いていた。


軽くイラっとしつつも「けいすけ~、数学の教科書貸してくんね?」と言いながら、2人に歩み寄った。


「はぁ!?また忘れたんかよ?」


「鞄重くなるだろ?」


美香は俺とケイスケの話の途中で、黙ったまま逃げるように教室へ戻っていた。


『逃げた? 俺、もしかして避けられてる?』


少し不安に思っていると、ケイスケは「ったく… てか、ロッカーに入れてないん?」と聞いてくる。


「何が?」


「数学の教科書。 ロッカーに無いのかって聞いてんの!」


「ああ、あるよ?」


「何で借りようと思ったし」


「いや… 無いかなって思ってみたり?」


「は? 意味わかんねぇし。 自分のがあるなら自分の使えよな!」


ケイスケはそのまま教室へ向かってしまい、一人残されたまま、大きくため息をついていた。




結局、美香とは話すことが出来ないまま、数日が過ぎたある日。


この日は部活がなかったため、ユウゴとケイスケの3人で歩いていると、ユウゴがいきなり切り出してきた。


「美香の事好きなん?」


突然切り出されたことに驚き、かなり動揺してしまった。


「い、いきなり何言ってんだよ?」


「ん? なんとなく? わかりやすいなぁって?」


「あ、それで教科書借りようとしてたんか!!」


ケイスケも思い出したように声を上げ、納得したように何度も頷く中、ユウゴが再度切り出した。


「てかさ、手震えたり、鳥肌立ったりしないん?」


「…そこまで近づいてないし、まともに話したこともないし… そんなのわかんねぇよ!」


「この前すれ違った時は?」


「何ともなかった。 つーか、あんな一瞬じゃわかんねぇだろ?」


苛立ちながらケイスケに答えると、ユウゴとケイスケは意味ありげな感じで「ふーん」と言うだけだった。

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