第7話 共通点

翌日、学校に着いてすぐ、自分の席に荷物を置き、ユウゴの元へ急いだ。


ユウゴの席の横に立ち、ポケットに手を入れたまま、ユウゴとくだらない話をしていると、ユウゴの隣の席に美香が荷物を置き、椅子に座る。


すかさずユウゴは「おはよ!」と元気に声をかけると、美香は恥ずかしそうに少し微笑み「おはよ」と小声で返事をしていた。


ハッキリとした二重瞼と小さな唇、全体的に少し幼く見える印象の顔は、生まれて初めて胸を締め付けていた。


『ヤバい… めちゃめちゃかわいい…』


美香に見惚れていると、急にユウゴが目の前で手を振り始める。


「ん? 何?」


「いや? ボーっとしてるからさ」


「あ、ああ…」と言いながらふと美香を見ると、美香は一緒に登校してきた女子の元へ。


ユウゴに囁くように「めちゃめちゃかわいくね?」と言うと、ユウゴは「へぇ~」と言った後、遠くにいる美香を眺め、再度俺の方を向いて「へぇ~」と声を上げていた。


「へぇ~ってなんだよ?」


「ああ言うのがタイプなんかなって思ってさ。 つーか手は? 大丈夫そうなん?」


ユウゴに言われ、ポケットから手を出すと、震えることも、違和感を感じることもなく、普通の状態を保っていた。


「…大丈夫かも」


小さく呟くように言うと、チャイムが鳴り響き、渋々教室へ戻って行った。



その日以降、休み時間にはユウゴの教室へ行くようになったんだけど、ユウゴは寝てばかりで美香の話を聞けないし、美香は休み時間になるとすぐ、女友達の近くに行ってしまうため、なかなか美香の話を聞くことが出来ずにいた。


頻繁にユウゴの教室に行っていたせいか、自分のクラスメイトよりも、ユウゴのクラスメイトの方が仲良くなってしまい、その一人に誘われ、帰りには駅の近くにある公園へ行くように。


肝心の美香とは共通点が見つからず、話しかけることも、挨拶をすることすらもできないままでいた。



入学式を終え、1週間たった頃。


学校の帰りに公園へ行くと、ユウゴと同じクラスのアキラが話しかけてきた。


「大地のクラスって、帰宅部OK?」


「うち? 何にも言われてないよ」


「うちのクラス、担任命令で全員部活に入らないといけないんだよね。 何にしようかなぁ… そういや、園田はバスケ部のマネージャーやるって言ってたなぁ… 大磯は野球って言ってたっけかな?」


「園田と大磯?」


「園田美香と大磯静香。 ユウゴの隣の席の女と、その友達。 なんか大地と同じクラスの奴がバスケ部マネージャーに勧誘してたっぽいよ?」


アキラの言葉を聞いた後、ユウゴが切り出してきた。


「俺、バスケ部入ろっかなぁ。 中学の時バスケ部だったし背デカいし。 大地も一緒にやんね?」


「やる」


思わず即答してしまい、翌日には入部届を提出しに行くことに。


「明日から部活来いよ」


顧問から吐き捨てるように言われ、ムカつきながらも職員室を後にし、美香との共通点が出来たことに、少しだけ胸を弾ませていた。


『これがきっかけで話せるようになれたら…』




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