第5話 悪化

解決の糸口が見えないまま数か月が過ぎ、部活も引退するとすぐ、高校受験目前になっていた。


周囲は教師から聞いた、高校の情報交換をしていて、自然とその情報が耳に入ってくる日々を過ごしていた。


放課後、ユウゴの家でケイスケに「大地はどこの高校にする?」と聞かれたけど、特に行きたい高校がなかった。


少し考えた後、数年前に設立された、自宅から一番近い高校を言うと、ケイスケは「俺もそこにしようと思ってるんだよね。 とりあえず普通科にしようかなぁ」と悩んでいるように声を上げた。


「大地は何科にするん?」


「グラフィックアーツ科にしようかなぁ… 新しくできたばっかだし、余裕で入れそうじゃね?」


「親父さんの会社もITデザイン系だよな?」


「俺には関係ないけどな。 兄貴が継ぐんじゃね?」


そんな事を話していると、ユウゴがため息をついた後、思い立ったように切り出してきた。


「大地! 勉強教えて!!」


「は? 何言ってんの?」


「俺、今のままじゃ高校いけないかもだから!! 頼む!!」


「俺よりケイスケの方が成績いいよ?」


「んじゃケイスケ! お願い!!」


ユウゴはケイスケに手を合わせながらお願いし、ケイスケは「仕方ないなぁ…」と呆れたように言っていた。


「ここだとユウゴの兄貴が邪魔するから、集中できないと思うんだよね。 大地の家って使える?」


「ああ、いいよ。 どうせ誰も居ないし、2人だけなら問題ないよ」


ユウゴは「神だ!!」と言いながら喜んでいた。



この日から、俺の家でケイスケがユウゴに勉強を教えるようになり、ユウゴは必死にペンを走らせていた。



ケイスケは推薦で合格し、俺とユウゴは一般入試を受けることに。


大勢の女子生徒が受験をしに来ていたけど、一定の距離を保っていたせいか、手に違和感を感じることはなく、試験に集中することが出来た。


一般入試試験の結果、俺とユウゴは合格し、3人とも同じ高校へ進むことが出来ていた。



そのまま月日が過ぎ、中学の卒業式を終えた後、数人の女子生徒が「一緒に写真撮ろ」と言ってきたけど、誘いの言葉を聞いただけで、手に違和感を感じてしまい、ポケットの中に手を入れて誤魔化していた。


写真を撮るために、寄り添うでもなく、ただただ右隣に女子生徒が立っているだけなのに、右側全体に鳥肌が立ち、収まろうとはしなかった。


それどころか、ポケットに入れている手がガタガタと震え始め、嫌な汗が出てきてしまう。


ユウゴはそれに気づいたように、「俺らそろそろ帰るわ」と言い、逃げ出すようにその場を後にし、ユウゴの家に直行していた。



「顔、真っ青だけど大丈夫か?」


ユウゴはそう言いながら水を渡してきた。


「ああ… サンキュ…」


そう言いながら水を受け取ると、手がガタガタと震えていた。


「なんか悪化してね? この前のレインボー女が原因?」


「わかんねぇ… なんだろな? これ?」


そう言いながら、震える手を見ていることしか出来なかった。

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