第4話 誤算

翌日、ユウゴとケイスケの3人で学校に行くと、玄関で俺の前に知らない女子生徒が立ち塞がった。


女子生徒は「最低」と言った後、その場を走り去り、ユウゴが切り出してきた。


「あ、昨日のメールの子かな?」


「え? メールしたん?」


「した。 【大地に紙貰った】ってメールしたら拒否られたよ? あの学年カラー3年かな?」


ユウゴは何も気にしていないような口調で言い、教室に向かってしまう。


『なんか悪い事したかも? まぁいいや。 土曜になれば全部変わるだろうし、気にすることないか』


そう思いながら、期待に弾む胸を抑えつつ、教室の中に入って行った。



待ちに待った土曜の午前中。


支度を終え、家を出ると、玄関の前にユウゴが立っていた。


「あれ? 何してんの?」


「ん? 綺麗な髪した女、見たくなった」


「いやいや、お前関係ないじゃん」


「見るだけだよ見るだけ」


「ダメだって! お前関係ねぇじゃん!」


「見るだけっつってんの!!」


何度止めようとしても、ユウゴは行く気満々で、止めることが出来ず、仕方なく2人で駅に向かっていた。


「絶対に話しかけたりすんじゃねぇぞ?」と念押しすると、ユウゴは「わかってるって! 見るだけだって!」と言うばかり。


ため息をつきながら駅に向かうと、そこには虹色の髪をした、ふくよかな女が立っていた。


すぐに物陰に隠れていると、ユウゴは「あれじゃね? 見事なレインボーカラー。 ある意味綺麗じゃね?」と言い、女の方を覗き込む。


恐る恐る覗いてみると、その女はタバコを吸いながら、鋲の付いた黒い革ジャンと黒いTシャツ、黒いレザーのミニスカートに、黒いレザーのロングブーツを履いていて、不機嫌そうに携帯を弄っていた。


「違う違う違う違う… ああ言うのじゃないから…」


自分の言い聞かせるように言うと、ユウゴは無言でスタスタと歩いて行ってしまい、慌ててその後を追いかけた。


通り過ぎる人たちの視線を独り占めするように、前を通る人たちは女の事を凝視している。


通りすがりにその女を見ると、耳だけではなく、顔中ピアスだらけで、違った意味の恐怖心が大きくなってしまい、声をかけることもなく、そのまま通り過ぎるのが精一杯だった。


女の前を横切った後、そのままユウゴの家に行き、ユウゴの兄貴に猛抗議をした。


「髪が綺麗って言うのはああいうのじゃないんだよ!」


「え? 違うの? 綺麗なレインボーしてなかった?」


「そう言うんじゃないんだってば!! もっと普通の子が良いんだよ!!」


「贅沢言ってんじゃねぇよ。 女が怖いくせに…」


「違った意味で怖いっつーの!! マジで悪化するわ!!」


ユウゴの兄貴は不貞腐れ、ユウゴは「あれは俺も怖い」と同意していた。


言いたい事を言った後、虚しさが押し寄せてしまい、肩の力を落としながら玄関に向かうと、帰宅してきたあゆみとばったり鉢合わせた。


あゆみは俺の顔を見ながら「ばーか」と言った後、階段を駆けあがり、自分の部屋に閉じこもる。


『確かに、あの兄貴に頼んだ俺がバカだったな…』


そう思いながら重い足取りのまま、家に向かっていた。

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