第3話 荒療法
ユウゴの兄貴はチョコを食べながら、「お前、彼女とかいねぇの?」と切り出してきた。
「こんな状態なんだぜ? 作れるわけねぇじゃん」
「欲しいとか思わねぇの?」
「そりゃ欲しいけどさ… 鳥肌立たない相手じゃないと無理じゃね?」
ユウゴの兄貴は少し考えた後、何かを閃いたように「あ」と声を上げる。
「荒療法って言うのがあるじゃん。 無理矢理女に慣れれば?」
「いやいや、無理過ぎるっしょ」
「お前ホントバカだなぁ。 習うより慣れろって言うだろ? 適当な女に惚れて慣れちゃえばいいじゃん」
「適当なのじゃ無理なんだよ!」
「お前、良い素材持ってんのに、ホントもったいねぇなぁ。 そんなんじゃ女が寄り付かねぇぞ?」
「俺が寄りつけねぇんだよ!」
「あ、そっか。 ほんともったいねぇなぁ… 女は良いぞ? 良いにおいするし、柔らかいし、お前にはわかんないかもしれねぇけど。 ホント、もったいねぇなぁ…」
『なんか疲れる…』
そう思いながら自分で買ってきたジュースを飲むと、ケイスケが雑誌を広げ切り出してきた。
「この中だとどれが好み?」
そのページには、30人以上も居るであろう、ポーズを決めた女子高生たちの全身写真が写っていて、ユウゴとユウゴの兄貴は真っ先に写真の女の子を指さした。
「え? 兄貴それ? こっちの方が良くね?」
「お前バカだなぁ… こっちの方が良い体してんだろ?」
「いやいや、だったらこっちの方が良くね?」
「いやいやいや、こっちの方が絶対に良いって」
2人は徐々にヒートアップしてしまい、完全に置いてきぼりを食らってしまう始末。
『アホ兄弟…』
そう思いながらため息をついていると、ケイスケが「大地に聞いてんの!!」と声を上げ「どれ?」と聞いてきた。
一通り雑誌の女子高生たちを眺めていると、だんだんわからなくなってしまい「わかんねぇ」と答えた。
「じゃあ、どういう子がタイプ?」
ケイスケの質問にしばらく考えた後、「えー… そうだなぁ… 髪が綺麗な子が良いかな…」と答えた。
するとユウゴの兄貴が「あ、俺知り合いにいるわ。 髪が綺麗な女。 紹介しようか?」と切り出してきた。
「え? マジで?」
「うん。 すんげー綺麗なのが居るよ。 会ってみるか?」
「お願いします!!」
思わず即答してしまうと、ケイスケがクスクスと笑い「何気に切羽詰まってたんだな」と呟くように言ってきた。
ユウゴの兄貴のおかげで、もしかしたらこの体質が改善されるかもしれない。
もしかしたら、この体質が治るかもしれない。
治ったら、彼女が出来るかもしれない。
ユウゴの兄貴のおかげで、一筋の光が差し込んでいるように感じていた。
その日の夜、ユウゴからメールで【土曜、10時に駅前集合だって】と言う短いメールが来た。
『土曜の10時… ユウゴの兄貴の知り合いだから、相手って年上だよな? 何着て行けばいいんだろ…』
そう思いながらクローゼットを開け、土曜に着ていく服を探していた。
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