第9話
よく見れば床には黒く変色している液体のようなものが多数飛び散っており、ただの汚れだと思っていたが、もしかするとこれは血液かもしれないとごくりと喉を上下させる。
(……ブラーマにばれて殺されたのか? いや、ブラーマの仕業であればここでこの子が目覚めるわけがない、回収してBドライブの連中に渡しているはずだ。何より死体をそのままにしておくなんてありえない。一体何があったんだ)
見回しながら考え込む朱里とは別に、417号はじっと骸を眺めたまま朱里に声をかけた。
「朱里」
「なんだ?」
「トーパでは個人識別の為、体にチップを仕込んでいると言っていたが、それはどの階級でもあるものなのか?」
「ああ、天蒼一族以外は全ての人にチップが埋め込まれていると聞いている」
「そうか、ではこの未起動品にもあるわけだな」
「それはそうだが、本人でさえ何処にチップがあるのか分からないんだぞ。しかも、このジャリアスにあるチェック装置は上部プレートの下一面と、マトラ内部だ。そんな所に死体を持って行けるわけないだろう。それにクジラのやっていたことがやっていた事だ、ブラストに通報するわけにもいかない。なにより、今ブラストに来られたらお前をどう説明すればいいのか。俺まで捕まっちまう」
「チップを見つけるのは簡単だ」
簡単だと言って見せた417号に朱里が驚いて一体どうやるんだといえば、417号はミイラとなった遺体を椅子からおろし床に寝かせる。
からからに乾燥しているように見えるミイラだったが、床に寝かせる作業をしている間どこかが欠損すると言うことは無く、朱里は遺体の状態を疑問に思いながらも417号の作業を手伝った。
手伝いながら観察した遺体は干物というよりも燻製されたような感じで、部位によってはなんともいえぬ弾力が残っている。室内にあったせいなのか、それともほかの要因があるのか、朱里はこの人物が誰かということよりもこの遺体の状況は一体何なのだろうというほうに疑問が移りつつあった。
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