第7話

 そうして、少し打ち解けてきたその時にクジラからの大量の注文で、俺は荷物を運び込んだ時にクジラに尋ねたんだ。

 コレだけの品、何に使うんだ? って。するとクジラは、誰にも言うなと念を押し、話し出した。

「つい最近の事なのです。このビルの地下で大きな爆音が響いて、ビルがとても揺れました。ビルが崩れても困りますから、僕は防護服を身に付けて、地下へ調べにいったのです。たくさんの毒気が噴出す中で、青白く光るものが見えたから、珍しい物かもしれないと発掘作業に使う小型作業機械を持って来て引き上げた。それが、このカプセルなのですよ」

 クジラに言われて見てみるとそこには、見た事のない卵形のカプセルがあり、中に女がいて、カプセルの上の方には「PROTOTYPE417」と書かれた銀の板が付いていた。

(これは、人なのか? 死んでいるんだろうか?)

 俺がカプセルのガラスの部分に顔を近づけて眺めながらそう思っていると、

「僕の考えが正しければ人造人間、つまり人が作り出した生命のはずなのですよ。はるか昔の人々は自分達で生命を作ったという。それが神の怒りをかい、大地が裂けたという宗教集団もいたらしいけどね。もし神が居るのなら、これは神が与えてくれた我々への最後の希望かもしれない。ここに書いてあるのをみるとコレは試作品って所みたいだね。直せるかどうかは分からないが少しこれに集中してみようと思ってね」

 とクジラは言い、目を輝かせ生き生きしていた。

 ブラーマの人に報告しないのか?って聞いたら、一気に顔が無表情になって、

「報告は、気が向いたらするよ」

 そういったクジラは背筋が凍るほど怖かった。

 俺はクジラがクシアのBドライブの頃、何の専門家で研究者だったのかとか知らないし、人造人間自体も何のことだかサッパリだった。

 でも、その時のクジラはいつものクジラと違っていて、なんだか恐ろしい感じがして、俺は荷物の取引も終わったし、あまり深く聞かずに帰ることにしたんだ。

 食料は二週間ちょっと分だから、切れたらまた連絡してくれと伝えてドアを出ようとしたら、クジラは「あぁ、忘れていた」と小さく言いながらこちらに近づいてきて、俺の肩に手を置き、耳元にそっと。

「朱里、この話は秘密だよ。わかるね?」

 低く、とても今までのクジラとは思えないような恐ろしい響きが耳の中に広がって、俺は視線をクジラに向けた。

 ぶつかり合う視線のその先にあるクジラの目は、見たことの無い冷たい鋭い眼差しで、乾いた喉に唾液を流し込んで俺は深く頷く。

「わかっているよ、誰にも言わない。なにより、俺がそんな話をしたところで信じるやつなんかいない。うそつき呼ばわりされるのがオチだ。商売人がうそつき扱いなんてされたらあがったりだからね、言わないよ」

 俺がそういうと、クジラは俺に鍵を手渡した。

「もし、万一のことがあれば使ってください。では」

 俺が「万一の事って? 何の鍵だよ? 」と聞くより早く、クジラは扉を閉め、中から鍵をかけた。

 そうして、食料が切れる二週間が経っても連絡は無く、数ヶ月経っても状況は同じ。

 こういうときはくたばっているのがほとんどだけど、近くに来たついでに少しだけ様子を見ようとおもってこのビルに来たんだ。

 そしたら、真っ裸のお前が居て驚いたんだよ。


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