第5話

 まずこの地表は「ジャリアス」。

 大昔に人間がその知恵の限り、発展させ、豊かに暮らしていた地表には、古代都市の失われた産物が山ほど眠っていると言われている。

 トーパにとっては貴重な資源の宝庫だが、地表の至る所から毒気が噴出し、マジブと呼ばれる肉食の害虫が生息している。

 しかし、トーパの上級層が指をくわえてみているかと言えばそうじゃない。資源発掘は最低階級のアリュートの仕事になっているんだ。

 まぁ、仕事っていう言い方は正しくないかもね。賃金は支払われないから。

 アリュートは罪人の集まりなんだ。無実であろうとなかろうと、罪であると決められた者が送られる最低の場所さ。最低限の物資を与えられ、毒気とマジブに怯えながらも発掘作業をしなければならない。さぼれば物資の供給はストップされてしまう。

 罪を犯せばそんなところに追いやられるから、そんなに簡単に罪を犯そうとするやつは居ないけど、上級層は資源が欲しいから、上級層の者とほんの少し目があって微笑んだだけでも罪人としてこの場所に人を送り込むんだ。

 で、ジャリアスからマトラを通って現れる各プレートの中でも階級は分かれ、一つのプレートの中で分けられた階級者の住む場所は「ドライブ」と言われる。

 ジャリアスの真上に存在するプレートは階級者「シードラ」の住むプレートだ。

 このプレートは「Jドライブ」「Iドライブ」「Hドライブ」「Gドライブ」の四ドライブに分かれる。プレートの中の階級としてはJが一番低く、Gが一番高い。

 階級「シードラ」は生産者とゴミなどの収集処理の連中だ。食物、動物、機械類。とにかく生産することが目的の連中が集まっている。そしてこの場所のプレートが一番大きい。つまり、それだけこの階級の者が多いってことだ。

 シードラの上のプレートの階級は「ヴァイス」。つまりは俺の階級だ。

 このプレートは「Fドライブ」「Eドライブ」「Dドライブ」の三ドライブ。Fが最も低く、Dが高い。

 ヴァイスは商人の集まりだ。シードラで仕入れたものをヴァイスで売りさばく。ドライブごとに売り物が異なっているけどDドライブの者は全ての商品を扱える。日用品から食料、武器まで何でも商品にすることが出来るのがDドライブの特権だ。

 ヴァイスの上が「クシア」。

 ここは「Cドライブ」「Bドライブ」の二ドライブで成り立つ。Bドライブの連中がCドライブよりも上。Cドライブは基本的に検閲や警備、裁判事や軍事関係をこなしていて、Bドライブは高度研究者の集まりだったはずだ。

 そして最上階に位置するのは「ブラーマ」だ。

 この都市トーパを建設、維持、掌握している天蒼と呼ばれる連中の住処だ。

 一応Aドライブなんだけど、そう呼ぶ人は少ないな。もっとも空に近く、トーパの「神」が居る場所っていうので「天原」って呼ばれている。

 何故神だと思う? 天蒼の連中は全てを掌握していて、全ての事を決める権限を持っているからなんだ。天蒼の言葉、行為を無視すれば当然の事のようにアリュートの階級となってジャリアスで働かされる。

 この都市に住む者には生まれた際に個人識別監視のチップが埋め込まれてあって、常に俺達住人はクシアによってチェックされている。まぁ、会話までは制限できないけど、行動は常に監視されている状況だ。

 「ヴァイス」「シードラ」「アリュート」には、各階級で行動制限がある。

 例えば、シードラはヴァイスとの売買は自由にできるが、それ以外の売買をするにはヴァイスを通さねばならいとか、そのヴァイスの中でもFドライブの者は日用品だけを取り扱い、食料品、武器を取り扱ってはならないとかね。

 それに、マトラを使った移動にも制限がある。上階級者は自分の階級より下層への行き来は自由だが、下階級者が上層へ移動する場合はクシアが発行したパスが必要で、不正侵入は処刑対象。

 上級と商売をしているヴァイス達だって、長年の取引相手であろうとも、もしパスを持ってなかったらその場で捕らえられ、どんな言い訳も聞いてくれないし、客である上級の者も助けてはくれない。

 制限以上の行為をした場合は、即座に反乱分子、罪人とみなされ、チップから放出される電撃によって神経を麻痺させられ、さらに薬が注入されて、仮死状態となる。そしてクシアの中にある警察組織「ブラスト」に連行されてしまい、理由など聞かれないままアリュートへと落とされるんだ。

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