08 よっぽどゴミじゃないか
翌日、予想した通り彼らに呼び出された。昼休みに運動部が使っている
「ほら、
左のズボンに手を入れたまま
「してないよ」
「あ?」
「お金は盗んでない」
声が震えた。
自分を
「ちっ、腰抜けが。言われたこともできねーのかよ」
「ばれたら、捕まるよ。そんなことできない」
「大丈夫だって、その店の店主は
亘はズボンを握りしめる。何かを我慢するときはいつもそうしてた。だが、掴んだ手を離し
「できない。それだけはできない。今まではパシりとかそういうのだったから従ってたけど、犯罪はできない。それは嫌なんだ」
俯いたままだったが、強くはっきりとした口調だった。亘の急変に彼は眉をつり上げ、
「何いってんだよ。親に見捨てられたゴミのくせに」
亘の顔が
彼らは自分の過去を知っているのだ。
「お前と同じ中学だった奴から聞いたぜ。お前父親に
「おい、言い過ぎだぞ」
「これくらい言ってやらなきゃ自分の立場がわかんねんだよ」
彼の言葉に後ろの3人も
亘は握った
「なんで、そんなこといわれなきゃ、いけないんだよ」
口が勝手に開いていた。
自分でもなぜ言い返したのか分からなかった。黙っていれば、いずれ終わるのに……
「確かに、あの男は俺を殴った。母さんも俺を助けてくれなかった。けど……俺はお前たちのように
心の中では警報が鳴っている。
引き返せと何度も唱えているが、拳は強く握られていた。
「人のこと
亘の反抗に彼は頭に来て亘に近づき顔を殴った。今まで、暴力を振るわれたことは一度もなかったが、とうとう手を上げられてしまう。殴られた勢いで地面に
逆らうべきじゃなかった。黙っていればこんなことにならなかったと後悔した時だった。
「はーい、そこまで~」
まるでシーンのカットをかけるかのような場にそぐわない声が飛んでくる。その方向に目をやると金髪の美女が立っていた。
「もう
いじめっ子達はミシェルの乱入に
「誰だよ。あんた」
「あれ?私のこと知らないの?君達が私の店にいたずらしてこいって言ったんだよね」
彼らはやっとミシェルが例の店の主だと知る。外国人がやっている店だとは知っていたがミシェルの人相までは知らなかったのだ。
「さて、取引しようか。君達4人は今後一切亘に手出しをしないでもらうよ。この子に何か頼むことも、
「何いってんだよ、あんた」
「でなきゃ亘のポケットに忍ばせてたこのボイスレコーダーを学校か警察に提出するけど、いいの?」
ミシェルは左手に持っていたボイスレコーダーを再生する。そこには先程の会話の一部が流れてくる。昨夜ミシェルが亘に渡したのはこれだったのだ。亘は携帯を持っていないので、音声を録音できる機器を持たせ、一連の流れを撮らせていた。
「よく撮れてるね。これだけでも君達がこの子をいじめていた証拠になるよ」
4人の顔は
皆、黙っていると一番後ろにいた者が少しずつ離れていった。巻き込まれたくないから逃げ出そうとしている彼をミシェルは見逃さなかった。
「ああ、後ろの君達も自分は無関係だって思わないほうがいいよ。実は動画も撮ってたんだよね~。4人全員の顔と亘を殴るところまでばっちりね」
今度はミシェルのスマホで撮っていた動画を流す。
「警察に持っていけば、
それとも君達の親に直接見せる?学校じゃ対処が遅そうだし、直に
あっはは!そんな顔しないでよ。私は何も難しいお願いをしてるんじゃない。亘へのいじめをやめてくれって言ってるんだよ」
「いきなり出てきて何言ってんだ!そいつを渡せ!」
逆ギレしながらミシェルに
「状況がわかってないようだね。君はもはや
ミシェルは涼しい顔でボイスレコーダーを
彼が動き出すのをみてミシェルはボイスレコーダーをキャッチし、伸ばされた彼の腕を掴んだ。そのまま逆側に
「いっ、痛っ!」
「これが最後の忠告。亘に2度と手を出すな。君達を生かすも殺すも私の
君達は祈ることしかできない。神の
それとも
ミシェルは腕の力を更に強める。
「体に傷なんかつけなくても痛みを与える方法はいくらでもある。試してみる?」
「わかった。言う通りにする」
ミシェルは彼の腕を放す。すると予鈴が鳴り彼らに教室に帰るよう促した。座ったまま
「亘、早退届出してきて。今日はこのまま帰ろう。表に車回しておくね」
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