15. アルベルト、落ちぶれる
国が聖女の追放という愚かな行為に踏み切ってしまっても。
現れる魔獣の勢いは止まらない。
騎士団員は、聖女の力が本物であることを理解していた。
私利私欲のために聖女を追放した騎士団長のアルベルトに憤るものも多い。
アルベルトは孤立しかけており、降格されるのも時間の問題だろうとも言われていた。
保身のために聖女を追放したはずが、かえって求心力を落とすことになったのだ。
皮肉なものであるが、聖女がどれほどまでに感謝されているかを知らなかったアルベルトの自業自得である。
「くそ、このままだと俺は破滅だ。
追放騎士も聖女もふざけやがって」
アルベルトは思ったように戦果を上げられず焦っていた。
追放騎士・ライトの率いる傭兵団は、各地で目覚ましい戦果を上げていると聞く。
国外での活躍が、当てつけのように王国の中にまで届くのだ。
王子を唆してほぼ独断で行った聖女の追放。
騎士団でこれまでと同等の戦果を上げ続ければ、言い分を認めさせられると考えていたが結果は散々なものであった。
功を焦るアルベルトは、自身の不利を知らせる報告をことごとく無視して遠征を断行。
既に求心力を失いつつあった騎士団長が集められた人員は多くない。
付いてきた者たちも、大半は脅して言うことを聞かせている連中だ。
士気は相当に低い。
「む、無理だ……。数が違いすぎる」
「あんな奴に命を捧げる必要はねえ。逃げろ!」
魔獣の大群を前に仲間がバタバタと倒されていくのを見て。
統率を失った騎士団員は、制止する声も聞かずにあっさりと逃走を始める。
「終わりだ、何もかも……」
逃げ帰っても責任を取らされる。
かといって魔獣の群れを押し返すだけの戦力も残ってはいない。
「生き恥を晒すぐらいなら……」
アルベルトは最期まで貴族としてのプライドを取った。
国を守ろうという誇りすら持たず、責任を取らされるぐらいなら名誉の戦死を選ぼうとしたのだ。
彼は目を閉じ、突っ込んでくる魔獣の群れを前に最期の時を待つ。
そして――
「自慢の騎士団はどうした?
騎士団長ともあろう方が、随分無様じゃないか?」
嘲笑うような声。
声の主は追放を言い渡した――ライトであった。
幸か不幸か。
現れたのは追放騎士・ライトが率いる傭兵団であった。
ライトの隣には、聖女・アンリエッタが寄り添うように付き従っていた。
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